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秋の気配が深まるなか、2025年10月7日、自民党の高市早苗総裁が靖国神社の秋季例大祭期間中の参拝見送りを検討していることが複数の関係者の話でわかった。首相就任が現実味を帯びる中、10月下旬から続く首脳外交への影響や、公明党との関係に配慮した判断とみられる。閣僚在任時を含め参拝を重ねてきた当人にとって、象徴的な身のこなしの変化である。外交の秋に、国内政治と国際潮流の綱引きが始まったと映る。
「外交の秋」に重なる計算
永田町の空気が変わったのは、2025年10月4日の総裁選後からだ。官邸入りが視野に入る中、周辺では「まず外を整えるべきだ」との声が強まったという。10月下旬からは韓国・慶州を舞台に各種閣僚会合が詰まり、続いて首脳級が合流する。地域秩序をめぐる駆け引きが濃くなる時期に、国内で波紋を呼びやすい動きは避けたい――そんな計算がにじむ。
APECの首脳会合は2025年10月下旬に韓国で開かれ、首脳級が集うリーダーズ・ウィークは2025年10月27日～11月1日に予定されている。周辺では一連の場外で米中のやり取りや各国の首脳会談が連鎖するとの観測が広がっており、日本側も中国・韓国との対話の糸口を探る局面に入る。参拝の可否が微妙な陰影を落とすのは、この時間軸ゆえである。
月末には東南アジアでの首脳外交も控える。多国間の場で足場を固め、日米韓の連携を崩さないことが高市氏にとっての最優先課題とみられる。偶然の重なりか、それとも必然の設計か。国内の象徴的行為が、ひとつ先の交渉カードや発信力に影響しうる現実が浮かぶ。
積み重ねた参拝と「適時適切」の線引き
高市氏はこれまで、終戦記念日や春・秋の例大祭にあわせて靖国神社を参拝してきた。政治的メッセージを内外に発する営みを続けてきたからこそ、今回の見送り検討は小さくない。2025年10月4日の記者会見では、首相就任後の在り方について具体的言及を避けたとされ、慰霊の方法は「適時適切に判断する」との姿勢をにじませたと周辺は語る。
参拝か不参拝かの二者択一ではないのも事実である。社頭での参拝に限らず、真榊の奉納や玉串料の納付といった方法もある。儀礼の重みを保ちつつ国際関係の波風を抑える「中間解」が模索されているとみられ、誰に有利なのかという視点が党内にも広がっている。価値観と現実の折り合いをどう付けるか――新たな政権の作法が問われる。
一方で、国内の支持基盤への説明も欠かせない。保守色の濃い支持層からは継続を求める声が根強い半面、経済や安全保障の実務を重視する有権者は「外交の損得」を冷静に見ている。高市氏がこれまで培ってきた安全保障観と、現実的な政権運営のバランスをどう見せるのか。その線引きは、就任直後の内閣支持の初速をも左右しうる。
連立と政権運営、そして次の一手
公明党との関係維持も重たい論点である。与党の足並みが崩れれば法案処理や予算編成に直結する。今回の見送り検討は、連立運営の安定を優先するサインと受け止められている。皇位継承をめぐる制度対応を党内で誰が担うのかについても、麻生氏の関与が取り沙汰されるなど、布陣の組み替えが進む気配があると関係者は語る。
年末へ向けた経済対策、税制、補正予算――課題は山積だ。外交日程と重なり合う政治日程の中で、何を優先し、何を後回しにするのか。たとえば首脳会談の地ならしを優先して静かに時機を待つ、あるいは会期後に参拝の判断を回すといった選択肢も見える。いずれに転んでも、説明の筋道とタイミングが鍵になる。
現時点で確認されている範囲では、高市氏は決断を急がない構えである。首脳外交の連鎖が一段落するまで波紋を広げないのか、それとも国内に向けて原則を明確化するのか。次の一手は、国内世論と国際社会の受け止めをにらんだ「静かな政治」の延長線上にあるとみられる。秋の社に風が通う頃、答えが見えてくる。
