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2025年10月15日、自民党本部に静かな緊張が漂った。高市早苗総裁が、トランプ政権で駐日大使を務めた米共和党のビル・ハガティ上院議員と面会したとの情報が広がった。臨時国会で首相に選出されれば、アジア外交の初戦が一気に加速する局面である。27日前後の動きが読めぬ中、日米関係の入口設計をどう描くかが問われている。
米要人との接触が続く永田町
一部報道によれば、会談は党本部で短時間行われ、通商と安全保障を軸に意見交換したとみられる。ハガティ氏はトランプ氏の初政権期に駐日大使を務め、在京の政財界に太い回路を持つ。政権移行期の感度を確かめるには格好の相手であり、相互の優先順位を早期にすり合わせる狙いが浮かぶ。
会談後、高市氏は国家安全保障局や外務、財務両省の幹部からも説明を受けたとされる。防衛装備の共同調達、為替・投資のボトルネック、経済安全保障の制度運用など、論点は幅広い。初動でどこに優先度を置くかが交渉の地合いを左右し、官邸と省庁の一体運用が鍵になるとみられる。
米議会とのパイプづくりも外せない。上院の外交・軍事関連委員会は対外政策で強い影響力を持ち、政権中枢と議会の双方に通じる回路の確保が不可欠だ。与野党の温度差を見極め、国内の与党内調整と並行して対米の接触面を増やせるか。永田町では、布石が始まったとの見方が広がっている。
迫るASEAN日程とアジア歴訪の波
外交カレンダーは待ってくれない。マレーシアが議長国を務める2025年のASEAN関連首脳会議は、2025年10月26日から28日にクアラルンプールで開かれる見通しだ。米国のトランプ大統領も出席すると伝えられ、地域秩序や経済の再編をめぐる駆け引きが一段と濃くなる局面が近づいている。
日本の新首相は就任直後からこの場に臨む公算が大きい。日米のみならず、中韓やASEAN各国の首脳が並ぶ東アジア首脳会議の枠も重なり、短時間で複数の二国間会談をこなす展開が想定される。移動の制約と実務の負荷を乗り越え、限られた時間で成果文書と実務合意を積み上げられるかが問われる。
一方で、トランプ氏のアジア歴訪に日本訪問が組み込まれるかは流動的である。現時点で確認されている範囲ではマレーシア日程が核で、二国間首脳会談の形式や場所は詰めの段階とみられる。日程の一挙手一投足が市場や安全保障に波紋を広げ、国内政治の呼吸にも影響を与えかねない。
焦点となる防衛負担と投資、そしてAPECへ
議題の焦点は見え始めている。日本の防衛費負担の在り方、在日米軍の運用と装備移転、対米投資の履行や供給網の強靱化である。内政の制約を踏まえつつ、数値目標と工程表で合意の骨格を描けるかが信頼の試金石となる。財政、産業、外交の三位一体で臨む構えが求められる。
高市氏はこれまで防衛力の強化と産業技術の底上げを訴えてきた。初会談でのメッセージは、国内配分と外交の両立をどう示すかに直結する。防衛装備の共同開発や投資促進の枠組みを再設計できれば、中長期の実利がにじむ。反対に初動でつまずけば、交渉コストが跳ね上がる恐れがある。
年後半には韓国・慶州でのAPEC首脳会議も控える。通商、デジタル、気候の三本柱で合意形成を探る舞台であり、日本の首相にとっては経済アジェンダを打ち出す好機だ。ASEANとAPEC、二つの節目をどうつなぐか。新体制の航路が、この数週間で輪郭を帯びる。
