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自民党総裁選が詰めの局面に入った2025年9月28日夜、高市早苗前経済安全保障相がインターネット番組で示したのは、政策一致を軸にした“横串の連携”という構えだった。参政党や日本保守党の名を挙げられても「この政策だったら一緒にやれる」と応じ、相手方に乗り込んででも協力を求める姿勢を語った。少数与党を前提にした政権運営の現実味が増す中、発言は次の政治地図をにわかに具体化させる。
「政策が合えば一緒に」——高市氏の連携観
番組で高市氏は、あらかじめ連立先を決め打ちすることは「失礼だ」と線を引きつつ、実現したい政策のためなら相手の代表のもとへ「飛び込んでいってでも」力を合わせたいと語った。焦点になったのは、近年支持基盤を広げた新興保守系の政党との距離感である。直近の地上波討論では、外国人政策をめぐり「参政党とタッグを組むのか」と問われる場面もあった。高市氏は自民党内の議論を前に進める考えを示しつつ、司令塔機能の明確化に言及している。番組での発言と合わせて観察すると、彼女が掲げるのは“誰と組むか”より“何を通すか”の優先順位だと言える。あくまで政策駆動で、案件ごとに賛同勢力を束ねる発想だ。これまでの政権運営では、自公の枠組みが政策決定の起点になってきた。だが与野党の議席配置が変わる現在地では、法案ごとの機動的な合従連衡が、現実的な選択肢として浮上している。
総裁選の地平と「合意形成」の再設計
総裁選の討論会や会見で高市氏は、基本政策が合致する野党とも連立を視野に入れる考えを示してきた。背景には、物価や安全保障をめぐる優先法案を速やかに仕上げたいという思いがある。自民党の公式発表でも、彼女は「日本列島を強く、豊かに」と題して国力の底上げを掲げ、財政出動や成長投資を前面に置いてきた。では新興保守との接点はどこにあるのか。移民・難民の受け入れと社会統合の制度設計、エネルギーの安定供給と原子力の扱い、情報や経済の安全保障などが、議論の起点になりやすい。高市氏は外国人政策を「排外主義ではない」とし、不安に向き合う姿勢を強調している。これは感情的な対立を避け、監視や就労、教育、地域社会のルール整備など具体策で合意形成を探るというサインにも見える。国会戦術としては、一本の大型法で衝突を招くより、個別テーマの束ね法や部分改正を積み上げ、賛同圏を広げる手順が有効だ。連携の間口を狭めないためにも、メッセージの温度を抑え、政策技術で詰めるやり方が相性がいい。
参政党・日本保守党と重なる政策の“結節点”
参政党は「日本人ファースト」を掲げ、移民・教育・食料安保など生活に直結するテーマで支持を得てきた。日本保守党は言論空間での存在感をテコに、移民や治安、エネルギーでより強い制度改革を主張してきた。高市氏の政策群と見比べると、交点になりうる結節点が見えてくる。第一に、違法就労や不法滞在への対処と技能人材の受け入れをどう両立させるかという線引きだ。ここでは入管の審査と地域負担の見える化、納税と社会保障の関係整理が鍵になる。第二に、エネルギー安全保障だ。次世代炉や核融合の研究開発を進めつつ、老朽設備の扱い、再生可能エネルギーの立地と系統強化の優先順位を詰める必要がある。第三に、経済安保の制度面だ。土地・水源の管理からサプライチェーンの監督まで、国会での横断的な合意が問われる。新興保守との政策協議は、この三つの輪をどう重ねるかという実務に落ちる。相手の主張をそのまま取り込むのではなく、政府の実装能力と財源の裏付けを示し、合意できる“接着面”だけを選び取る作業になる。総裁選の勝敗にかかわらず、次の通常国会で問われるのは、この接着面の設計力だ。
広がる余白、試される統治
発言の射程は、単なる政局の布陣にとどまらない。重要法案が積み上がる現状では、与野党の固定的な対立軸より、テーマごとに賛否が交錯する局面が増える。高市氏が繰り返す「政策一致なら一緒にやれる」という言い回しは、立法府の全体責任を前提にした現実的な作法だ。連立の形に固執せず、法案単位で合意を編むやり方は、政治不信が根強い状況でも成果を示しやすい。裏返せば、論点の分解と優先順位付けに失敗すれば、拙速や迷走のそしりを免れない。参政党や日本保守党は、支持者の熱量を背景に、より強いメッセージを求めがちだ。ここで統治の腕が問われる。制度として耐久性がある合意に持ち込めるか。感情の波に抗し、合意可能域を丁寧に拡張できるか。28日の発言は、その試金石になる。総裁選の結果がどう転んでも、次の通常国会の議場で評価は定まる。政治が取り戻すべきは、声の大きさではなく、合意を形にする技だ。
