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10月6日の東京市場は、開場直後から電光掲示板の数字が跳ね上がり、売買フロアに高揚が広がった。4日の自民党総裁選で高市早苗氏が選ばれ、景気刺激と金融緩和の継続を織り込む資金が一気に流れ込んだ格好だ。日経平均は史上最高値を塗り替え、為替は円安が進行。超長期金利は上昇し、政策期待と警戒が交錯する一日となった。
株は駆け上がり、ボードに新記録が灯る
買いは朝から途切れず、主要指数は力強く上昇した。日経平均は前日比で4%を大きく超える伸びとなり、47,000円台を初めて突破したのち、47,852円29銭まで上値を切り上げた。より広い銘柄で構成するTOPIXも2.7%高と続伸し、リスク選好の強さを示した光景がマーケットの空気を支配した。
背景にあるのは、緩和と財政の両輪を重視する新体制への期待感である。高市氏は安倍政権期の経済運営を継承し、物価と賃金の好循環を重視すると語ってきた。市場はそのシグナルを素早く読み取り、景気感応度の高い銘柄や成長株を中心に資金を配分したとみられる。偶然か必然か、期待は数字に表れた。
個別では強弱が分かれた。金融引き締め観測の後退で銀行株はさえず、業種別指数では唯一の下げとなった。一方、防衛関連は買いが集まり、三菱重工は2桁上昇と勢いを見せた。政策の向かう先が企業の将来像を映し、業種間の明暗がくっきり出た一日だったと映る。
円安と金利、同じニュースでも違う動き
為替市場では円が急落した。対ドルは一時1ドル=149円81銭と149円台後半まで下落し、対ユーロでは175円台半ばまで円安が進み過去最安値を更新した。投資家は緩和長期化の可能性に視線を向け、金利差拡大の思惑を積み上げた格好である。株高と円安が同時進行する、ここ数年で見慣れた構図が再び強まった。
債券は複雑な表情を見せた。超長期の40年国債利回りは3.51%まで上昇し、30年も3.28%近辺へ切り上がった。一方で2年などの短期は低下し、長短のコントラストが鮮明になった。財政拡張観測が将来の供給増を意識させる一方、近い将来の追加利上げは遠のくとの見方が短期金利に現れたといえる。
この金利配置は株式の物色にも影響した。長期金利上昇はディフェンシブ株や配当利回り銘柄の相対魅力をややそぎ、グロース色の強い主力株に資金が集中した。銀行株指数が2%下落したのは、利ざや拡大期待の剝落が意識されたためだ。景気押し上げ期待と財政・金利の持続可能性、二つの思惑が綱引きしている。
政権交代が映す期待と警戒
4日の自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出され、政策の地図は一気に描き直された。氏は緩和的な金融・財政運営を志向し、いわば「サナエノミクス」への期待が株式には追い風となった。一方で、国債の将来需給や長期金利の上振れリスクに市場は敏感で、超長期ゾーンの売りが膨らむ場面が続いた。
利上げ観測は目先で後退した。スワップ市場が示す年内の利上げ織り込みは週明けにかけて低下し、中央銀行の次の一手はより緩やかになるとの見方が広がった。短期金利の低下と長期の上昇という背反は、その思惑のねじれを物語る。市場は当面、データと政策当局の言葉を試す展開になりそうだ。
誰に有利なのか。株主にとって相場の追い風は明確だが、超長期金利の上振れは住宅や年金運用、政府の調達コストに跳ね返る。為替の節目は企業収益を押し上げる一方、生活者に輸入物価の重さを意識させる。現時点で確認されている範囲では、期待は市場を強く押し上げた。ただし波は大きい。次の一手が試される。
