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秋の慶州で日中のトップが向き合った。2025年10月31日、高市早苗首相はアジア太平洋経済協力会議（APEC）首脳会合の場をとらえて中国の習近平国家主席と会談し、両国関係の安定化に向けた議論を交わした。会談は日本側の要請に基づき行われたと伝えられている。
首脳会談の骨子――「戦略的互恵」と建設的・安定的関係
会談で習主席は、両国は近隣の重要な関係にあり、長期的に健全かつ安定した発展を図るべきだと強調した。そのうえで、日中間の四つの政治文書で定められた原則と方向性を順守し、二国間関係の政治的基盤を守りつつ「戦略的互恵関係」を前進させ、新時代の要請にかなう建設的で安定した関係の構築を目指すと表明した。
経済面ではハイエンド製造やデジタル経済、グリーン分野、金融、医療・高齢者ケア、第三国市場などで協力余地に言及し、サプライチェーンの安定と多国間貿易体制の維持を掲げた。あわせて人的交流の拡大、政府・政党・立法府間の意思疎通、地域・国際枠組みでの協調を呼びかけ、相違の適切な管理を通じて関係を全体として前に進める姿勢を示した。
懸案の扱い――海洋・経済・人権と実務課題
現時点で確認されている範囲では、会談の焦点は懸案の同時並行処理に置かれている。日本側は尖閣諸島を含む東シナ海での情勢や公船活動への懸念を伝え、資源・産業に直結するレアアースの輸出管理、人権状況への問題提起など、安保と経済・価値の各レーンで立場を示す構えだと事前に報じられていた。
実務面では、東京電力福島第一原発の処理水放出を巡って中国が停止していた日本産水産物の輸入再開や、日本産牛肉の対中輸出再開といった案件の前進を確認できるかが課題とされた。これらは2024年の首脳往来で政府が説明してきた論点の延長線上にあり、今回も継続協議されたとみられる。
位置づけと今後――初会談の意味と対話の持続
高市政権発足後、両首脳による対面は今回が初めてである。中国側は「パートナーであり、互いへの脅威ではない」との共通認識の堅持を掲げ、日本の新内閣に対し「正しい対中認識」を持ち、歴史と未来を見据えた平和・友好・協力の大方向を維持するよう注文を付けた。
日本側にとっても、対立点の固定化を避けつつ、経済安保・供給網・環境・人の往来など重層的な課題を同時に動かすためには、首脳レベルの対話を一定の頻度で確保することが不可欠である。まずは実務トラックでの積み上げと、相違の管理を制度化する取り組みが問われる。政府内の説明や日程公表からは、高市総理の下で首脳外交の機動性を高める方針も読み取れる。
数字でみる今回の会談
2025年10月31日／開催地は韓国・慶州／国際会議は第32回APEC首脳会合の機会／中国側は「四つの政治文書」の明確な規定（歴史・台湾など）を順守するよう要請／中国国内では第15次5カ年計画の策定議論が進行中と説明／中国国家主席の韓国訪問日程は10月30日〜11月1日と報じられている。
写真情報や速報ベースの要旨は国営新華社の英語配信や国内配信でも確認できる。国内メディア配信では、会談実施と論点の見取り図が先行して示され、関係改善のモメンタムと併走する形で実務課題の前進可否が注目点と整理された。
現実的には、一足飛びの妥結よりも、輸入規制や特定品目の扱いなど、政治的コストが抑えられる分野から段階的に道筋を付ける展開が想定される。会談の形式自体が対話継続の意思表示であり、年内外相級での往来や当局間協議の積み増しが次のチェックポイントとなる。
