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観客席の前で爆音が響き、空から炎をまとった機体が地面へと吸い込まれていった。2025年11月21日、アラブ首長国連邦ドバイの航空ショーで、インド空軍の国産軽戦闘機テジャスが展示飛行中に墜落し、操縦していたパイロット1人が命を落とした。
ドバイ航空ショー最終日を襲った突然の惨事
事故が起きたのはドバイ南部のアル・マクトゥーム国際空港で開かれていた中東最大級の航空ショー最終日の午後だった。現地時間14時過ぎ、単発の軽戦闘機テジャスが低高度で曲技飛行を行っていたところ、ロール機動の直後に急速に高度を失い、滑走路脇の地面に激突したと伝えられている。墜落直後には救急車や消防車が数分以内に現場へ駆け付け、飛行展示は一時中断された。
衝突の瞬間、機体は火球となって炎上し、黒い煙が観客席の方向にも立ちのぼった。会場にいた人々の多くがスマートフォンで撮影しており、その映像はSNS上で一気に広がった。亡くなったのはインド空軍のウイングコマンダー、ナマンシュ・シヤルで、37歳のベテラン操縦士だったと伝えられる。
国産戦闘機テジャスと2度目の重大事故
テジャスは、インド国営企業ヒンドゥスタン・エアロノーティクスが開発した単発の軽量多用途戦闘機で、老朽化したMiG-21などの後継としてインド空軍への配備が進む国産機である。小型で機動性に優れ、空対空戦闘と対地攻撃の双方をこなす設計とされる。インド政府は輸入依存を減らす「メイク・イン・インディア」政策の象徴として追加調達を決めており、今回の事故はその看板機に暗い影を落とした。
一方で、安全性への視線は厳しさを増している。2024年3月にはインド西部ラジャスタン州で訓練中のテジャスが事故を起こしており、機体損失を伴う重大事故はここ約2年で2件目とされる。インド空軍とUAE当局は合同調査で原因究明を進める方針で、今後の飛行試験や輸出交渉への影響も注視される。夕暮れの滑走路脇に残る黒い焦げ跡が、最新鋭機でも消せないリスクの重さを静かに示している。
