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ホワイトハウスの執務室で交わされた短い一言が、カリブ海の緊張を一段と押し上げた。2025年10月16日、ドナルド・トランプ大統領が、米中央情報局（CIA）のベネズエラでの秘密工作を承認したとの報道を認めた。麻薬流入と治安悪化を理由に掲げる米政権と、体制転換の思惑を警戒するマドゥロ政権。海の見えない攻防が現実味を増している。
ホワイトハウスでの異例の認証
米大統領が情報機関の作戦を公言する場面はまれである。16日、トランプ氏は記者団に、ベネズエラでのCIAの行動を自ら承認したと述べた。詳細は伏せたが、その一言が地域の空気を変えたと映る。
政権はベネズエラ発の犯罪組織を安全保障上の脅威と位置づけ、圧力枠組みを整えてきた。3月にはトレン・デ・アラグアを外国テロ組織に指定し、追加措置を宣言した経緯がある。
さらに、ベネズエラ産原油を輸入する国への関税措置も打ち出した。資金源の遮断と政治的圧迫を重ねる構図であり、秘密工作の示唆と合わせ、対外・対内の二重の圧力が濃くなる展開だ。
海の作戦と数字が語る緊張
9月以降、米軍はカリブ海で麻薬密輸に関与したとされる小型船への攻撃を重ねている。現時点での報道では、少なくとも4隻が標的となり、ベネズエラ発の船が含まれたとされる。駆逐艦の展開が緊張を増幅させている。
一部報道によれば、洋上攻撃の死者は累計で27人に達した可能性がある。14日には沿岸に近い海域で小型船が撃たれ、複数の死者が出たとの情報もあるが、詳細はなお不明だ。米側は関与組織や身元の開示を控えている。
トランプ氏は自身のSNSで、標的の船が既知の密輸航路を通行し、違法組織と関係していたと主張した。ただ、証拠開示は限定的で、法的根拠や手続の適正を問う声が広がっている。
ベネズエラの反発と国内の動き
マドゥロ大統領は16日、テレビ演説で事態のエスカレーションに警鐘を鳴らし、「戦争ではなく平和を」と呼びかけた。体制転換を狙う干渉は認められないと強く主張した。CIA関与の示唆を「心理戦」と切り返す場面も目立つ。
政権は結束を強調する一方、軍や治安部隊の即応態勢を整える動きが伝えられる。演習の指示や民兵の動員に関する情報もあり、油田地帯や港湾の警備強化が進むとみられる。緊張の裾野は広い。
他方、米側の圧力は軍事だけにとどまらない。司法措置や制裁の強化、麻薬関連容疑で要人の訴追や報奨金の拡充が続く。選挙の正当性をめぐる疑義も絡み、受け止めは割れている。
問われる法と抑止、次の一手
米政権は自衛権の行使と越境犯罪の抑止を掲げるが、秘密工作の承認を公言した異例さは同盟国にも判断を迫る。致死的行使が続けば誤認のリスクは高まる。透明性の確保が鍵となる。
ベネズエラ側にとっては、領域主権と体制維持のせめぎ合いだ。制裁と軍事プレゼンスの圧力のなかで、軍の結束や市民生活の耐性が揺さぶられる。交渉か対立か、選択は重い。
明確なのは、海の向こうの出来事が国境を越えて波及するという事実である。違法薬物の遮断、移民の保護、地域の安定が絡み合う。次の一手を誤れば、長い対立の連鎖が続く恐れがある。
