トランプ大統領、議員6人を「反乱行為」と非難　軍との緊張さらに高まる

※記事を視覚化したイメージであり、実際の事象とは異なります。

2025.11.21

本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]

スマホの通知音が鳴り続けた。２０２５年１１月２０日の朝、トランプ米大統領のトゥルース・ソーシャルには、大文字だらけの投稿が次々に現れた。標的となったのは、違法な命令には従うなと兵士や情報機関の職員に呼びかけた民主党の連邦議員６人だ。大統領は彼らの行動を「最高レベルの反乱的行為」であり「死刑になり得る犯罪」だと断じ、ただでさえぎくしゃくしていた政治と軍の距離をさらに縮めてしまった。

兵士に違法命令を拒むよう訴えたベテラン議員たち

発端となった動画が公開されたのは、その２日前の１８日だった。元ＣＩＡ分析官でイラクに派遣された経歴を持つエリッサ・スロットキン上院議員が、約９０秒の映像をＳＮＳに投稿したのである。画面には、元宇宙飛行士で海軍出身のマーク・ケリー上院議員や、陸軍や情報機関で働いた下院議員４人が順番に登場し、軍や情報コミュニティの現役メンバーに向けて静かに語りかけている。

６人はいずれも制服やバッジを通じて国家に仕えた経験を持ち、その言葉は「仲間への私信」のように響く。彼らは、今の政権が軍や情報機関を自国民に向けさせようとしていると危機感を示し、「法や憲法に反する命令を誰かに強いることはできない」と繰り返した。最後には海軍ゆかりのフレーズ「船を見捨てるな」と結び、視聴者に憲法を守る誓いを思い出してほしいと訴えた。

軍人はそもそも、上官の命令に従う義務を負う。一方で、明白に違法な命令に従えば、自らも処罰の対象になり得ると定めるのが軍刑法の仕組みだ。米軍を統治する統一軍事裁判法（Uniform Code of Military Justice）は、合法な命令への服従を求めつつ、戦争犯罪など明らかに違法な行為に加担した場合には処罰を認めている。しかし、現場でそれを見極めるのは難しく、兵士が命令を拒んだ結果、後から「合法だった」と判断されれば、今度は不服従として処分されかねない。

「反乱扇動、死刑もあり得る」と応酬するトランプ氏

こうした文脈を無視するかのように、トランプ氏の反応は徹底して攻撃的だった。２０日の投稿で彼は、動画の内容を「最高度の反乱扇動だ」と決めつけ、「この国の裏切り者たちは全員、逮捕され裁判にかけられるべきだ」と書いたうえで、「反乱的行為であり、死刑の対象になり得る」とまで述べた。さらに、議員たちを絞首刑にすべきだと主張する利用者の投稿を引用し、初代大統領ジョージ・ワシントンも同じことをしたはずだという言葉を拡散した。

批判を受けたホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、記者会見で「大統領は処刑を望んでいるわけではない」と火消しに回った。一方で、６人の議員が１３０万人に及ぶ現役軍人に指揮命令系統に背けと呼びかけたのだと非難し、彼らこそ法的責任を問われ得ると主張した。これに対し議員側は連名の声明を出し、「どんな脅しや暴力の呼びかけも、憲法を守るという私たちの義務を曲げることはない」と反論している。

連邦議会でも受け止めは割れた。民主党のハキーム・ジェフリーズ下院院内総務は、トランプ氏の言葉が誰かの殺害を招く前に暴力的な言動を撤回すべきだと警告した。これに対し、共和党のマイク・ジョンソン下院議長は、大統領は扇動罪の定義を述べただけだと擁護し、民主党の動画こそ「極めて不適切で危険」だと批判した。司法省や国防総省が動画の内容を調査すると表明したこともあり、議会の言論が刑事責任の対象となり得るのかという、重い論点が突き付けられている。

政治的暴力の連鎖と、言葉が帯びる重さ

こうした応酬がとりわけ重く響くのは、アメリカ社会がすでに深刻な政治暴力の連鎖の中にあるからだ。２０２５年には保守派活動家チャーリー・カーク氏の暗殺、ミネソタ州での民主党州議会議長と夫の射殺、ペンシルベニア州知事ジョシュ・シャピロ氏の公邸への放火襲撃など、立場を問わず政治家が標的となる事件が相次いだ。司法当局は、今年前半だけで少なくとも１５０件の政治動機による攻撃を把握しているとし、過激派によるテロ未遂も増加傾向にあると警鐘を鳴らす。

世論調査も人々の不安を映し出す。ピュー研究所が１０月に公表した調査では、「政治的な動機に基づく暴力が増えている」と答えた人が８５％に達し、共和・民主いずれの支持層でも同じ水準だった。さらに別の調査では、国を立て直すには暴力もやむを得ないと考える人が３割に近づいているとの結果も出ている。選挙で選ばれた議員に対し、現職大統領が死刑をちらつかせる言葉を投げかけることは、こうした空気の中で受け止められている。

軍人が違法な命令を拒めるかどうかという、かつては教本の注釈のようだったテーマが、いまやＳＮＳのタイムラインで大文字の怒号とともに飛び交っている。その言葉が画面の外でどんな現実を生むのかを、社会全体が静かに見つめざるを得ない局面に入っているように見える。