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薄曇りのワシントンで受話器越しの声が強まった。2025年10月15日、トランプ米大統領はCNNの取材に対し、ガザの停戦合意をハマスが履行しなければ、イスラエル軍の戦闘再開を認めることを検討すると語った。停戦の糸口が見えた直後の強硬発言は、合意の行方と米国の関与のあり方に新たな緊張をもたらしたと映る。
ホワイトハウスで高まる圧力の気配
発言は生々しい。トランプ氏は「武装解除しなければ、我々が解除させる」と語り、ハマスに対して即時の非武装化を迫った。CNNへの発言は、停戦の前提に武装解除を含めるという米側の要求を改めて前面に出した格好だ。現時点で確認されている範囲では、米側の調停チームがこの条件を一貫して伝えてきた構図が浮かぶ。
その後、16日未明、ホワイトハウスの大統領執務室でトランプ氏は記者団に「米軍の投入は必要ない」と述べ、イスラエルの取り組みを支援する考えを示した。戦闘再開の是非をちらつかせつつ、米軍の直接関与は回避するという線引きである。発言は停戦履行の監視と圧力を両立させる狙いをにじませる。
一方で、停戦の当事者であるハマスに対しては、合意順守と非武装化の履行が迫られている。合意から間もない段階で強硬な言葉が飛び交う背景には、合意の履行工程、とりわけ人道措置や武装解除の段取りになお不確実性が残る現実があるとみられる。
エルサレムで進む「次の一手」の準備
イスラエル側の空気も張りつめる。カッツ国防相は軍に対し、戦闘再開に備え「ハマスを打倒する」ための包括的計画を用意するよう指示した。大統領発言と呼応するかのように、停戦が破綻した場合の軍事オプションを整える動きだ。イスラエル政府内では、停戦維持と圧力維持の両にらみが続いていると映る。
計画策定の指示は、停戦の条件が履行されない場合の「即応」を意識したものだろう。特にハマスの武装解除や地下トンネル網の無力化は、合意の中でも最も難度の高い課題であり、現地の治安統治の枠組みとも密接に絡む。イスラエル軍の再展開を示唆する動きは、合意の検証期間に重石を置く効果を狙ったものとみられる。
休戦の縁で続く駆け引き
米中央軍は16日未明、ハマスに対し民間人への暴力の即時停止と「遅滞なき」武装解除を求めた。停戦後にガザ内でハマスの治安部隊が再び活動し始めたとの報告を受け、米軍は「合意の厳格な順守」を促している。米政権の強い言葉は、現地の実効支配や治安空白を埋める暫定的な統治設計を意識した圧力とも読める。
一方で、停戦合意は人道支援や人質・遺体の返還といった繊細な工程を抱える。合意の履行が進むほど、各当事者の国内政治や安全保障判断がその歩調を左右する局面が増える。大統領の「言えばすぐ戻る」という強い表現と、米軍の直接投入は避けるという線引きの間で、抑止と合意履行の均衡をどう保つか。揺れの中に次の一手を探る時間が続いている。
