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アメリカのトランプ政権が、100万ドル(約1億5600万円)の拠出で米国の永住権に相当する資格を得られる新たな移民制度「トランプ・ゴールドカード」の申請受け付けを始めた。富裕層向けの“ビザをお金で買う”仕組みが本格的に動き出し、移民政策の公平性をめぐる議論が広がりそうだ。
富裕層ビザが開く「近道」とその代償
ゴールドカードは、申請時に国土安全保障省による審査を受け、通過した個人が米商務省に100万ドルを「寄付」すると、米国の永住権に相当する資格が優先的に与えられる仕組みだ。企業が社員を対象に利用する場合は1人あたり200万ドルが必要とされる。
トランプ氏は、通常の就労ビザや投資ビザよりも短期間で永住権を取得できる「より強力なカード」だと強調している。実際には1万5000ドルの審査手数料や厳格な身元調査も課されるが、金銭面で条件を満たす富裕層にとっては、子供の教育や資産防衛のために米国に拠点を持つ近道になり得る。
日本でも、海外居住を検討する起業家や富裕層にとっては選択肢の1つになりそうだ。一方で、専門職として長年働きながら厳しい抽選や年収要件をくぐり抜けてきた人たちからは、「1億円超を払えるかどうかで門戸が決まるのか」という違和感も噴き出しかねない。
既存制度からの転換と世界が見てきたリスク
今回の制度は、投資による永住権を認めてきた既存のEB-5プログラムや多様性ビザ抽選を事実上置き換えると位置づけられている。従来は数十万ドル規模の投資と雇用創出が求められ、審査の滞留も深刻だったが、新制度では雇用要件を外し、政府への「贈与」に一本化した点が大きな転換だ。
英国やポルトガルなどでも、高額の投資で居住権を得られる「ゴールデンビザ」は導入されたが、不正資金の流入や住宅価格の高騰を招いたとして相次いで見直しや廃止が進んできた。米国も同じ道をたどれば、大都市の不動産市場にさらなるマネーが流れ込み、地域格差や治安への影響が懸念される。
さらに、企業献金と同様に政治とカネの関係を深めるのではないかという指摘や、大統領令だけでどこまで新たな永住権ルートを設けられるのかという法的な疑問も残る。米国の移民制度が「能力」から「支払能力」へと軸足を移すのか、今回のゴールドカードはその試金石になりそうだ。
参考・出典
- Fact Sheet: President Donald J. Trump Launches the Gold Card Program
- Trump launches gold card program for expedited visas with a $1 million price tag
- Trump's 'gold card' program goes live, offering US visas starting at $1 million per person
- Trump launches $1m ‘gold card’ visa scheme amid immigration crackdown
- The global wealthy are lining up for Trump's $1 million Gold Card after price cut
