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連邦施設の前に警備の制服が増え、緊張が滲むシカゴで、政治の火花がはじけた。2025年10月8日、トランプ米大統領がイリノイ州のプリツカー知事とシカゴのジョンソン市長を「収監すべきだ」とSNSで主張。移民取り締まり強化と州兵展開をめぐる攻防が一段と先鋭化した。
シカゴで深まる対立、発端の8日
市中心部では連邦職員の集会や警備の姿が交錯し、ざわめきが広がった。大統領は同日、交流サイトに市長と知事を拘束の対象にすべきだと書き込み、ICE職員を守れなかったと断じた。挑発的な文言が瞬く間に拡散し、街の空気がざらついた。
これに対し、ジョンソン市長は「私はどこへも行かない」と反撃し、民主主義への脅威だと大統領を強く批判した。プリツカー知事も「来られるなら来ればいい」と挑発をはねのけ、権力の濫用を糾弾。両者の言葉に、住民の不安と怒りが重なる。
現時点で両氏に刑事容疑や起訴の公表はなく、政治的対立が刑事手続きに接続される異様さが際立つ。大統領の言葉は法執行の独立性を揺らし、連邦と州・市の権限の線引きをめぐる古くて新しい問いを呼び起こしていると映る。
州兵展開と市の防衛線
同日、州兵側はテキサスから約200人、イリノイから約300人がシカゴ地域に到着し、連邦職員や施設の防護に就く準備が整ったとされた。展開は少なくとも60日間を見込むという。制服の列が北風を受けて進む光景に、緊張が折り重なる。
一方、市は連邦の民事的な移民執行に市有地を使わせないとする行政命令に踏み切った。背景には「ウェルカミング・シティ」条例や州法の枠組みがある。市庁舎は現場対応の指針を再確認し、令状提示の徹底など細部の運用を職員に共有している。
州の側も抵抗の構えを崩していない。知事は展開差し止めを求める法的措置を進め、全米の知事にも声をかけている。連邦司法省が今年初めに州と市を提訴し、移民協力制限の違法性を主張した文脈も重なり、対立の地層は厚みを増している。
法廷と世論、次の焦点
法廷では、部隊展開の一時差し止めをめぐる判断が早ければ週内にも出る見通しと伝わる。判事の一言が現場の空気を一変させる可能性があり、行政権の範囲と地方自治の自律が改めて測られる局面が近づくとみられる。
政権側は連邦職員が脅迫にさらされていると訴え、安全確保を理由に展開を正当化する。これに対し、市や支援者は合衆国憲法に照らした権限の逸脱だと反論し、ICE関連施設前では抗議と逮捕が報告されている。街の緊張は簡単に解けない。
誰の安全を、どの権限で守るのか。シカゴで起きている衝突は、移民政策の是非を超え、法の支配と民主的統制の手触りを問う局面に入った。大統領の強硬路線に対し、地方の現場がどこまで踏みとどまれるのかが次の焦点となる。
