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ホワイトハウスの門をくぐったサウジアラビアのムハンマド皇太子を、トランプ米大統領が笑顔で迎え入れた。会談の場で語られたのは、米国への6000億ドル投資と、それを1兆ドルへと増やすという約束、最新鋭戦闘機F35の売却方針、そしてジャマル・カショギ氏殺害事件をめぐる食い違う評価だった。経済と安全保障の大きな取引の陰で、人権と信頼をめぐる溝が改めて浮かび上がっている。
「1兆ドル」誓約の重さとサウジ国内の事情
会談は18日、ホワイトハウスで行われた。トランプ氏は、サウジが米国に6000億ドルを投資することで合意したと明かし、友人として1兆ドルに増やすかもしれないと持ちかけたと語った。これに対しムハンマド皇太子は、投資額を1兆ドルに増やすと即座に応じ、その場で金額が一気に跳ね上がった。6000億ドルは日本円で約90兆円、1兆ドルなら150兆円規模に達し、単独の国家予算にも匹敵する巨額である。
一方で、資金の出し手であるサウジは余裕があるとは言い切れない。同国は紅海沿岸で進める近未来都市NEOM(ネオム)構想や、2034年ワールドカップ開催に向けたスタジアム建設など、数十兆円規模の国内プロジェクトを同時並行で抱えている。すでに予算超過や工期の遅れが指摘されており、財政負担は重い。そうした中で、米国向け投資だけで1兆ドルをひねり出せるのか、具体的な資金源や投資先はまだ示されていない。誓約のインパクトとは裏腹に、実行までの道のりは不透明なままだ。
F35売却と防衛協定が示す安全保障の再接近
トランプ氏は今回、米国がステルス戦闘機F35をサウジに売却する方針を公にし、両国が防衛協定で合意したとも述べた。詳細な条文や発効時期は明らかにされていないが、イスラエル向けと同様の枠組みにすると説明しており、中東地域での軍事バランスに影響し得る決定である。F35は米軍の中核戦闘機であり、その輸出は米国の同盟関係の深さを示す象徴でもあるだけに、サウジへの供与は「特別扱い」と受け止められている。
米サウジ関係は長年、武器輸出とエネルギーを軸に築かれてきた。近年は米国の産油量増加で石油依存は相対的に低下した一方、防衛装備の分野ではサウジはなお最大級の顧客だ。ホワイトハウスは今回の協議を「歴史的な投資と防衛協力のパッケージ」と位置づけ、米国内の雇用と産業基盤の強化を強調する。しかし、最新鋭兵器の拡散が地域の緊張を高めないか、またサウジと距離をとってきたイスラエルとの関係にどう影響するのかなど、見えない波紋も広がりつつある。
カショギ氏殺害をめぐる評価のずれと関係修復
会談の場でトランプ氏は、2018年にトルコの在イスタンブール総領事館で起きたジャマル・カショギ氏殺害事件について、「皇太子は何も知らなかった」と述べ、ムハンマド皇太子を強く擁護した。カショギ氏への質問を投げかけた記者を「客人を困惑させている」と叱責し、事件そのものにも距離を置く姿勢を見せた。しかし米情報機関は、皇太子がカショギ氏の拘束または殺害作戦を承認していたと結論づけており、公式評価と大統領の発言には明確なギャップが存在する。
カショギ氏事件を境に、米サウジ関係は人権問題をめぐって冷え込んできた。今回のホワイトハウスでの盛大な歓迎は、その関係を再び戦略的パートナーシップへ引き戻そうとする政治的なジェスチャーでもあるだろう。同時に、巨額投資や防衛協定が前面に出れば出るほど、事件の検証や説明責任は置き去りになっていく。芝生の上を行進する儀仗兵や頭上をかすめる戦闘機の轟音の裏で、解かれないままの問いが静かに積み重なっている。
参考・出典
- Trump defends Saudi prince over journalist murder, hails $1tn investment vow | National News | blackbeltnewsnetwork.com
- Trump’s Call With Saudi Crown Prince Results in $600B Pledge to US – Newsweek
- Fact Sheet: President Donald J. Trump Secures Historic $600 Billion Investment Commitment in Saudi Arabia – The White House