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トランプ米大統領が2025年10月1日から輸入品への新たな関税を実施すると表明した。対象は医薬品や大型トラック、キャビネットや布張り家具など幅広い。狙いは国内製造の呼び戻しだが、物流や医療費への波及が避けられるかが焦点となる。
何が決まったのか
発表は2025年9月26日（日本時間）未明、トランプ氏の交流サイトへの投稿で示された。根拠として国家安全保障を掲げ、米産業を不公正な競争から守るとした。
医薬品ではブランド医薬品や特許取得済みの製品に100％の関税を課すと宣言した。一方で、米国内での工場建設に着工済みの企業は適用除外とする方針を示し、投資の国内回帰を強く促している。
大型トラックには25％の関税を掛けるとした。投稿ではピータービルトやケンワース、フレイトライナーなどの大手を名指しし、産業の健全性は国家安全保障上も不可欠だと強調した。
住設や家具では、キッチンキャビネットやバスルーム洗面台に50％、布張り家具に30％の追加関税を課すとした。適用開始は一律で来週に迫る。
一方で詳細はなお不透明だ。既存の幅広い追加関税に上乗せされるのか、あるいは相殺されるのかの説明はない。欧州連合との枠組みでは医薬品など一部品目の関税を15％以内に抑えるとする合意文言があり、日本との二国間合意でも基準税率の取り扱いが整理されている。これら既存の合意が実装される限り、影響が一部で抑制される可能性がある。
広がる影響と日本への読み筋
物流コストには上向きの圧力がかかり得る。中・大型トラックの対米供給ではメキシコの存在感が大きく、北米サプライチェーンの摩擦は運送費や納期に跳ね返る公算がある。スウェーデンのボルボ・グループはメキシコのモンテレイに大型トラック工場を建設中で、稼働開始を来年に見込む計画だ。域内での完成車や部材の行き来が増す構図の下、追加関税は価格決定や投資判断に直結する。
医療サイドの緊張感はより直接的だ。関税100％は価格転嫁の余地を広げ、保険者や病院の調達負担を押し上げる懸念がある。除外条件の「着工済み」の定義や審査の運用が不明確なままでは、企業の在庫戦略や供給の切り替えにも遅れが出かねない。米内での製造拠点整備には年単位の時間がかかるのが一般的で、短期の需給逼迫が意識される。
市場はすでに反応した。アジアの製薬株は広く下落し、住友ファーマが3％超安となった。豪州のCSLは6年ぶりの安値水準に沈み、薬価や保険財政への波及が意識された。家具関連では中国の家具メーカー指数が軟化し、米住宅関連のコスト上振れを織り込む動きが広がった。
日本企業にとって鍵は、二国間合意と新関税の“重なり方”だ。現時点で確認されている公的文書では、日本との合意に基づく基準税率の仕組みや、欧州連合との枠組みにある医薬品など一部品目の上限条項が示されている。政府間の取り決めが優先されるなら、医薬品を含む一部の最終税率はEU並みの水準に収れんする可能性がある。他方、国家安全保障を根拠とする個別の追加措置がどこまで上書きし得るかは、運用と司法判断に左右される。
残る問い
今回の公告は、関税の法的回路として通商拡大法の232条など既存権限を軸に据えつつ、発動の積み上げ方を曖昧に残した。適用開始は2025年10月1日だが、既存の追加関税や相互関税枠組みとの整合、国別・品目別の例外設計、そして「着工済み」認定の透明性が詰め切れていない。最高裁での関連審理も控える中、企業は制度の揺れを前提に、価格条項や仕入れ先の二重化など短期の備えと、中期の生産配置転換の両にらみを迫られる。
日本の実務でいま必要なのは、まずは自社の品目がどの枠組みに該当するかの棚卸しだ。医薬品の輸入企業は米国内投資の進捗確認と移管シナリオの策定を急ぐべきである。荷主や小売は運賃や調達コストのサーチャージ条項を整備し、価格転嫁のタイミングを見極めたい。関税は政策であると同時に交渉の道具でもある。制度の微修正が続く前提で、週明けからの現場対応を先行させることが、最終的なコストを抑える近道になる。
