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大統領府の報道官が文書を掲げて読み上げたのは、2025年11月12日付の1通だった。差出人はトランプ米大統領、宛先はイスラエルのヘルツォグ大統領。ネタニヤフ首相への恩赦を求める内容である。大統領府は受領を認めつつ、恩赦には正式な申請が必要だと明言した。戦時指導と司法の独立、同盟国の距離感が交差する場面である。
書簡が映した距離と近さ
書簡は、首相を「困難な局面で国を率いる指導者」と評価し、汚職裁判を「政治的で不当」と位置づけた。トランプ氏は10月のイスラエル訪問時にも国会での演説で同趣旨を訴えており、今回の書面はその主張を制度の扉に直接届けた格好だ。宛先を個人名で呼びかける文言も添えられ、同盟首脳同士の近さを強調している。
一方、大統領府は「誰であれ恩赦を望むなら、定められた手続きに沿った申請が必要」と応じた。イスラエルの大統領職は儀礼的側面が強いが、恩赦権限は持つ。ただし運用は例外的で、法務当局の所管部局が資料や意見を取りまとめ、大統領が最終判断を下すのが通例だ。係争中の案件については慎重姿勢が繰り返し示されてきた。
ネタニヤフ氏は2019年に収賄、詐欺、背任で起訴され、裁判は2020年に始まった。実業家からの金品受領は約70万シェケルとされるが、本人は一貫して無罪を主張している。今回の書簡はその経緯が続く中で届いた。戦時の意思決定と法廷の時間は速度が異なる。政治の加速に対し、司法の手続きはあえて歩調を崩さない。
イスラエルの恩赦制度とは
恩赦は、大統領が個別事情を踏まえて刑の減免や記録の抹消などを決める制度である。裁判の判決や量刑といった通常の司法プロセスの外側に置かれた救済で、例外的な運用が前提だ。権限は憲制上付与されるが、運用は法務省の「恩赦部門」が担い、関連資料を収集して意見を付し、大統領の判断に供する。司法権を上書きするのではなく、最終手段としての裁量が位置づけられている。
申請は本人、弁護人、直系親族などから可能とされる。提出後は警察記録や医療・更生状況などの資料が確認され、必要に応じて関係機関の意見が求められる。制度の趣旨は個別の事情に応える「憐憫の権能」にあり、政治的議論の熱とは切り分けられてきた。今回の書簡も、申請主体の提出がない限り直ちに審査に入るものではない。だからこそ、手続きの入口と出口の違いが重い意味を帯びる。
戦時と選挙、法廷と官邸が隣り合う時期に、赦すかどうかの議論は静かに重みを増している。