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長射程の名前が現実味を帯びた。10月13日、トランプ米大統領がウクライナへの巡航ミサイル「トマホーク」供与に言及し、モスクワの警戒が一段と強まった。SNS上ではメドベージェフ氏が核の誤認リスクに触れて牽制したとされ、誤算が戦線外に波及しかねない緊張が走る。言葉が装備の影を先回りし、交渉の駆け引きが加速している。
米大統領の示唆が投げた波紋
10月13日、トランプ氏は専用機内で記者団に対し、戦争が収束しない場合にはウクライナにトマホークを送る可能性に言及した。長距離の巡航ミサイルを「非常に攻勢的な兵器」と呼び、ロシアに向かう事態は望まないと語ったが、必要なら選択肢になり得ると示した発言である。供与の最終判断は明言せず、ロシア側との対話に触れつつ圧力のカードを透かせた格好だ。
発言の余波は即座に広がった。ロシア大統領府のペスコフ報道官は、米国がトマホーク供与に踏み切る可能性について「極めて懸念している」と述べ、対立の段階が変わるとの見方をにじませた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、米側と長距離能力や防空強化を協議中だと語り、17日にホワイトハウスでの会談を目指す動きも伝わる。交渉の場は、武器の名前を挟んで一段とざわついている。
戦場の焦点は射程にある。トマホークは最大約2,500キロの射程とされ、戦線の背後にある指揮統制・補給・航空拠点を叩く能力が議論を呼ぶ。供与が現実化すれば、ウクライナの抑止と交渉力を押し上げる一方、ロシア側の警戒反応を強めることは避けがたい。寸前の抑止と過剰な挑発、その境目がどこにあるのかという問いが浮かぶ。
核の誤認という最悪の連鎖
こうした中、メドベージェフ国家安全保障会議副議長が13日にSNSで、トマホークが発射された場合に核か通常かの識別が困難だと主張し、強い報復を示唆したとする投稿が注目を集めた。投稿全文の一次確認は現時点で限定的だが、核エスカレーションの連鎖を想起させる表現が広く拡散し、米政権の検討に対する露側の「心理的抑止」の色合いが濃いと映る。
巡航ミサイルの飛翔だけで弾頭種別を確証できない、という「曖昧さ」は抑止と誤算の両刃である。発射の兆候を核攻撃と誤認すれば、報復の論理が先行しかねない。一方で、米側は段階的な圧力として供与を示唆し、ロシアに停戦交渉のテーブルへ戻る決断を迫る構図だ。危うい均衡の上で、どこまで踏み込むかという政治判断が問われている。
ウクライナは、空からの攻撃に耐える防空と、侵攻拠点を遠距離から麻痺させる長射程の能力を求め続けてきた。ロシアは供与を「新たな段階」と警告しつつ、迎撃能力の向上を誇示して牽制する。発言の強度は増しているが、供与の是非はなお流動的である。数日のうちに予定される首脳会談が、圧力と抑制の線引きをどこに置くのか、その手がかりになるとみられる。
