トランプ氏が全輸入トラックに25％関税、国内企業に波紋

2025.10.07

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アメリカの空に秋の冷気が満ちた2025年10月6日、トランプ米大統領が輸入トラックに新たな関税を課すと表明した。対象は米国に入る全ての中型・大型トラックで、税率は25％、発動は11月1日とされた。貿易措置の射程をさらに広げ、国内生産の梃子入れを狙う一手である。業界は価格転嫁と供給の再編を迫られ、現場の計算が一斉に動き出している。

発表の骨子とずれ込んだ発動日

大統領は10月6日、SNS上で「11月1日以降、他国から米国に輸入されるすべての中・大型トラックに25％の関税を課す」と投稿した。関税率の明示に対し、実務の詳細は示されず、適用範囲の定義、暫定措置の有無、通関時の判定基準などは現時点で確認されていない。通商手続きの鍵を握る告示や告示番号、実施要領が追って示されるのかが焦点となる。

発動日は当初10月1日案が取り沙汰されたが、企業側の影響試算と調整が長引き、最終的に11月1日へと先送りされた経緯がある。デトロイト勢を中心にロビー活動が激しく、部品在庫や港湾での積み替え計画、販売店の値付けカレンダーまで影響が及ぶためだ。時間を買った形だが、1カ月の猶予で現場はどこまで準備を整えられるのか、緊張が走る。

今回の措置は、通商拡大法232条に基づく大型トラック輸入の調査に連動する動きとみられる。232条は「国家安全保障」を軸に輸入調査を行い、必要と判断すれば関税や数量制限を発動できる仕組みだ。対象は重量1万ポンド（約4.5トン）超の中・大型トラックおよび部品とされ、輸入構造が一部の海外サプライヤーに偏る実情が問題視されてきたと映る。

産業界の攻防—誰に有利か

発表の裏側では、自動車大手の思惑が交錯した。事情に詳しい関係者によれば、ステランティスはメキシコ生産の中型ピックアップ「ラム」への影響を懸念し、免除や軽減を求めてきたという。いっぽうでGMとフォードは強く反発し、仮に特例が認められれば、米国内組立て車に対してコスト面の不均衡が生じると主張した。だれの生産ラインに追い風が吹くのか、綱引きが続く構図である。

中・大型トラックは乗用車と異なる需給で動く。車齢が長く、代替需要は景気循環と運輸・建設投資に敏感だ。関税がコストを押し上げれば、受注のタイミングや仕様変更、リース条件の見直しに波及する。国内メーカーには価格決定力の強化が働く半面、海外工場からの供給に依存するモデルには逆風が吹く。誰に有利なのかは、最終的に調達網の組み替え速度で決まるとみられる。

今回の線引きは、従来の鉄鋼・アルミ関税や環境規制の強化と重なり、累積的なコスト増をもたらす恐れがある。部品段階の適用をどう扱うかも要所だ。車体やエンジン、アクスルなど主要ユニットが国境をまたぐ現実を踏まえれば、原産地判定は一段と複雑になる。関税の「名目」は25％でも、通関現場の手間や在庫増を加味した実効負担はそれ以上に膨らむ光景が浮かぶ。

価格と供給網—現場の影響

米商務省の統計によれば、昨年の中・大型トラック輸入は約24万5000台、総額は200億ドル超に達したとされる。関税が上乗せされれば、運送、建設、自治体サービスまで幅広い分野で導入価格の上昇が避けられない。購入を遅らせればメンテナンス費は増え、車齢の高止まりが安全や効率に跳ね返る。企業の資本支出計画が再計算され、地方政府の入札仕様にも波紋が広がっている。

市場構成を見れば、ダイムラー・トラックのフレイトライナー、ボルボ・グループのマック、パッカー傘下のピータービルトとケンワースなどが存在感を放つ。これらのブランドは米国内生産と輸入部品の組み合わせで成り立つため、部材ベースの適用範囲次第で影響は変わる。完成車だけでなく、シャシーや主要サブアセンブリの扱いがボディメーカーの納期にも直結する。

次の関門は制度の「条文」だ。232条調査の結論、政権の決定、官報掲載という一連のステップが公表されれば、企業は正式なHSコードや適用除外の手続きに沿って動ける。現時点で確認されている範囲では、大統領の表明が先行し、告示や実施通知はこれからとみられる。11月1日という日付が示された以上、港湾と工場は週単位で積み上げを調整し、価格表は静かに書き換えられている。

発表の骨子とずれ込んだ発動日

産業界の攻防—誰に有利か

価格と供給網—現場の影響

参考・出典