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ホワイトハウスの会見場で、ドナルド・トランプ米大統領が記者の問いに応じて身を乗り出した。2025年11月17日、ベネズエラに米軍の地上部隊を送る可能性を問われた大統領は、「何も除外しない」と述べ、一方でマドゥロ大統領と話し合う用意にも触れた。カリブ海ではすでに麻薬密輸対策を名目とした軍事作戦が続く中、発言は「対話」と「武力行使」の両方をちらつかせる形となり、緊張に新たな色合いを加えている。
軍事介入も対話も否定せず、揺れるメッセージ
この日、トランプ大統領はホワイトハウスでのやり取りで、ベネズエラへの米軍投入について「選択肢から外すつもりはない」と明言した。地上部隊派遣という最も重い軍事手段を、少なくとも口頭では残したかたちだ。同じ会見でマドゥロ大統領との直接対話について尋ねられると、「おそらく話すだろう」「基本的に誰とでも話す」と述べ、圧力と対話の両にらみの姿勢を打ち出した。軍事オプションとは、制裁や外交だけでなく武力行使も選択肢に入れるという政治的メッセージであり、実際に行うかどうかとは別の意味を持つ。今回の発言も、ベネズエラ側に圧力をかけつつ、自らには退路を残す言葉の配置だと受け止められている。
一方、マドゥロ大統領は以前から、米軍がカリブ海に展開しているのは「体制転覆」を狙ったものだと繰り返し批判してきた。米側は、ベネズエラ政府やその周辺が麻薬密輸に関わる犯罪組織と結びついていると非難し、カリブ海で「麻薬運搬船」とみなす船舶への攻撃を続けている。ホワイトハウス高官はロイター通信に対し、大統領がベネズエラの話を聞く姿勢を見せていても、軍事的選択肢が消えるわけではないと語った。対話に含みを持たせる発言の裏側で、「力による威嚇」を維持する意図がにじむ構図である。
麻薬対策と資源、交差する思惑
米政権が表向き掲げる最優先の目的は、麻薬密輸の阻止だ。実際にカリブ海周辺での攻撃作戦は、麻薬を積んだとされる船舶を標的としており、麻薬組織の一部をテロ組織として指定する動きも進んでいる。こうした枠組みは、軍や情報機関が国外の組織に対して強い権限を行使できるようにする仕組みでもある。ホワイトハウス高官も、いま最も重視しているのは麻薬の流れを断つことだと説明し、作戦の正当性を強調した。ただ、その線引きがどこまで事実に基づくのか、国際社会からの検証は欠かせない。
同じ高官は、ベネズエラが豊富な資源を持ち、米国企業にとって大きな利点になり得るとも指摘した。世界有数の原油埋蔵量を抱える同国をめぐっては、これまでも政権交代や制裁のたびに、資源と政治が複雑に絡み合ってきた歴史がある。麻薬対策という名目で軍を展開しつつ、資源国としてのベネズエラをどう扱うかという経済的な計算が、陰に陽に政策に影を落としているように見える。軍艦や航空機が行き交う海の向こうで、外交とビジネス、治安対策が一つのテーブルに載せられている現状は、地域の人々の暮らしに長く尾を引く可能性がある。
空母の航跡が残る海面の下で、麻薬と資源、そして政治の思惑がゆっくりと絡み合い続けている。
