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官僚や銀行、警察など10業種への信頼度を尋ねた中央調査社の意識調査で、医療機関と自衛隊が最も高い評価を得たことが5日に明らかになった。調査は東京都中央区に本部を置く世論調査機関が実施したもので、医療機関は前回の2023年、前々回の2021年に続き3回連続で首位となる。一方、国会議員は今回も最下位に沈んだ。なぜ、同じ公的サービスを担う存在の間で、ここまで大きな信頼の差が生まれているのだろうか。
命と安全を守る現場に集まる「頼りになる」評価
今回の調査は、国会議員や官僚、銀行、警察、マスコミなどと並べて、医療機関や自衛隊への信頼の度合いを尋ねたものだ。医療機関は2021年以降3回連続でトップに立ち、自衛隊も同じ水準の高さだったとされる。長年続く同社の同種調査でも、自衛隊や医療機関は平均評点で上位に位置してきたと報告されており、今回の結果は一時的な「ご祝儀」ではなく、継続的な傾向の延長線上にある。
背景には、人々が「目に見えるかたちで役立っている」場面を何度も経験してきたことがある。感染症流行期の医療体制の逼迫や、災害時の救助・輸送活動など、医療従事者や自衛隊員の働きぶりはニュースやSNSを通じて繰り返し共有されてきた。世界規模の調査でも、医師や科学者、教師といった職業は各国共通で高い信頼を集めるとされ、日本の今回の結果もその流れと重なる。
高い信頼は、同時に重い期待でもある。高齢化の進行や相次ぐ自然災害、安全保障環境の変化のなかで、「最後は医療や自衛隊が何とかしてくれる」という空気が強まれば、現場への依存と負担はさらに増す。専門家の間では、信頼を持続させるには、職員の過重労働を是正し、ミスや不祥事が起きたときにこそ情報を開示し、説明を尽くす仕組みづくりが欠かせないとの指摘もある。信頼が厚い分だけ、「任せきり」にしない支え方が問われている。
最下位の国会議員、広がる政治不信との重なり
今回の10業種の中で、国会議員が最下位だった事実は、日本社会に根強い政治不信をあらためて映し出す。中央調査社が過去に行った同様の調査でも、国会議員や官僚は他の職業に比べて低い評価が続いてきた。 日本財団が若者を対象に実施した意識調査では、日本の政治に「期待ができる」と答えた人は2割程度にとどまり、多くが「クリーンだと思わない」と感じているという結果も出ている。
政治への距離感は、政府の世論調査からもにじむ。内閣府が行う「社会意識に関する世論調査」では、政治家が国民の声をよく聞いていると感じる人の割合は高くない一方で、「医療・福祉」や「治安」などには比較的前向きな評価が集まる。 医療や自衛隊が生活の場面で直接接する相手であるのに対し、国会議員の活動は日常から見えにくく、成果も実感しづらい。その間に、政治資金や世襲をめぐる不祥事が続けば、「自分たちよりも自分や支援者を優先しているのではないか」との疑念が膨らみやすい構図だ。
こうした信頼のギャップは、単に「人気のある職業」と「不人気な職業」の差にとどまらない。災害や医療の現場に厚い信頼を寄せながら、政策を決める政治には冷ややかな視線を向けるという状態は、危機時の合意形成や、負担の分かち合いを難しくしかねない。政治側には、資金や人事をめぐる透明性を高め、決定の理由を丁寧に説明する責任がある一方、私たち有権者にも情報を見極め、選挙や対話の場を通じて関心を示し続ける姿勢が求められる。医療機関と自衛隊に託された信頼の重さと、国会議員への不信とのあいだの溝を、どう埋めていくのかが静かに問われている。
