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雨上がりの工事現場に重機の音が低く響く。2025年10月16日、TSMCの魏哲家会長兼CEOが決算説明会で、熊本第2工場の建設に「すでに着手している」と語った。量産の入り口は「顧客のニーズと市場の状況しだい」との含みを残しつつ、足元の業績はAI需要の追い風を受けて伸びた。日本の半導体回帰を映す一場面である。
熊本第2工場、静かに動き始める
阿蘇の外輪山から冷たい風が下りる夕方、菊陽町の造成地では土砂を運ぶダンプが往来していた。魏氏は2025年10月16日の決算説明会で、熊本第2工場の建設をすでに開始したと説明した。従来は年内着工の方針が示されてきたが、現場では段階的な工事が積み上がる局面に入ったとみられる。設備の大型化で基礎工事や搬入動線の整備に時間を要する構図が浮かぶ。
一方で、これまで第2工場の進捗には遅れの観測もつきまとってきた。交通インフラや大型装置の搬入ルートなど外部条件の制約が指摘され、量産開始時期の見通しに幅が出ていた経緯がある。今回の「着手」発言は、地ならしを超えて工事フェーズが前へ進んだサインと映る。ただし、建屋の立ち上げから装置搬入、歩留まりの確立までには段階が連なるため、時間軸の読みはなお流動的である。
AIが押し上げた好決算
同日の決算が示したのは、AI需要が牽引する強い数字である。2025年7〜9月期の売上高は331億ドルとなり、同社が示す想定為替(1ドル=29.91台湾ドル)で約9,900億台湾ドル規模に達した。粗利率は59.5%、営業利益率は50.6%と高水準だ。前四半期からの伸びも鮮明で、先端ノードと高性能計算向けの受注が底堅さを保った格好である。
同社は次の10〜12月期についても、売上高を322億〜334億ドルのレンジで見通す。AIサーバーの増産とスマートフォン向けの季節要因が重なる一方、供給網の逼迫や装置据え付けの節目が収益性に揺らぎを与える局面も想定される。とはいえ、3ナノ世代の量産歩留まり改善やアドバンストパッケージの増強が続く限り、収益ドライバーの地合いは当面変わらないとみられる。
量産時期は「市場次第」の含み
魏氏が量産タイミングを「顧客ニーズと市場の状況による」と語った背景には、受託生産というビジネスの性質がある。第2工場の装置構成やラインの最適化は、テープアウトの波や顧客の製品ロードマップと連動する。結果として、建屋の出来高が進んでも、量産立ち上げは需要の山に合わせて調整される余地が大きい。価格とキャパシティを同時に最適化する判断が続くということだ。
他方で、一部報道は第2工場の量産が遅れる可能性を伝えてきた。地域の交通や物流の制約が指摘され、装置搬入の計画に影響が出るとの見立てもある。今回の「着手」発言は現場が前進している事実を示すが、量産時期を確約しない姿勢は、外部要因と需要曲線の双方をにらむ慎重さの表れでもある。足場は固まりつつも、ゴールテープを切る速度は市場が決める——そんな緊張感が広がっている。