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米軍が弾丸や装甲の材料となる重要鉱物の確保に向け、新たな一手を打つ。米陸軍はアイダホ国立研究所と鉱山会社パーペチュア・リソーシズと組み、弾薬の起爆剤に使う金属アンチモンなどを国内で精製する小型精製所の開発計画を公表した。中国への依存が露呈した兵站の弱点を、移動可能な「ミニ精製所」の網で埋めようとしている。
弾薬生産を縛る「見えない部品」アンチモン
アンチモンは、鉛合金を硬くしたり難燃剤として使われるほか、弾丸の底部にある雷管「プライマー」に欠かせない。中でも三硫化アンチモンと呼ばれる形は点火の安定性が高く軍用弾に広く用いられてきたが、米国内での生産は1960年代以降途絶えている。米地質調査所も軍事用途への比重の大きさから、アンチモンを重要鉱物に分類してきた。
世界のアンチモン供給の大半は中国に偏り、残りもタジキスタンやロシアなど少数国に集中している。米軍は2021年、中国が三硫化アンチモンの対米輸出を停止したことで、1年分とされた備蓄を取り崩しながらインドなどからの調達に走らざるを得なくなった。米Reuters通信によれば、この経験が「弾を作る材料を自国で管理すべきだ」という危機感を決定づけたという。
弾薬の調達担当者にとって、原料が途絶えれば工場を増やしても生産は伸ばせない。国防総省はすでに、米United States Antimonyなど国内企業に在庫用インゴットの長期供給を委託する契約を結び、輸入依存を減らそうとしている。今回の小型精製所構想は、その一環として「どこで戦っても弾を作れる体制」を整えようとする試みだ。
コンテナ4基の移動式精製所、その仕組みと狙い
陸軍がまず手掛けるのは、Westpro Machineryが設計したアンチモン専用の小型精製所である。標準的な海上コンテナ4基分の設備で鉱石を破砕し、薬剤を使って三硫化アンチモンを取り出す仕組みだ。年間生産能力は7〜10トンと商業製錬所に比べればわずかだが、平時の軍需を賄うには十分とされ、増産が必要になれば同型設備を並べて拡張できる。
陸軍は数年かけてこのプログラムに約30百万ドルを投じてきた。アイダホ国立研究所が今後6カ月かけて試験運転し、環境負荷や効率性を確認したうえで、陸軍とパーペチュア・リソーシズのために運転を担う計画だ。同社が進めるアイダホ州スティブナイト金鉱山計画は、副産物としてアンチモンを供給する戦略拠点と位置付けられており、2020年代後半の本格稼働を見込む。陸軍は他の国内アンチモンプロジェクトとも追加調達を協議している。
小型精製所の目的は、民間向け大量生産ではなく、軍需分を安定して確保することにある。銅や鉄鉱石を扱う巨大製錬所と違い、需要が限られる金属でも、軍施設や連邦政府の土地に設置して細く長く稼働させる前提で設計されている。米政府は将来、タングステンやレアアース、ホウ素といった他の重要鉱物にも同様の設備を応用する構想で、これらはいずれも内務省が公表した最新の重要鉱物リストに含まれる。
対中依存をどこまで減らせるか、残るリスク
アンチモン市場では、中国、タジキスタン、ロシアの3カ国で世界供給の9割超を占めるとされる。Metal Tech Newsなどによれば、中国政府が2024年にアンチモンなど一部鉱物の対米輸出を禁止したことで、ワシントンでは一段と危機感が強まった。ペンタゴンやホワイトハウスは、レアアースやニッケルなど他の重要鉱物でも自前の供給網構築を急いでおり、「資源の囲い込み」は各国の安全保障政策の一部になりつつある。
とはいえ、小型精製所だけで脆弱性が解消されるわけではない。アイダホの鉱山開発は2020年代後半の本格稼働を目指す長期計画で、立地する山間部の環境影響を懸念する声も根強い。米地質調査所はアンチモン鉱山の廃棄物は酸性水のリスクが比較的低いとしつつも、採掘や精錬が地域の水環境に与える影響を慎重に評価する必要があると指摘している。安全保障上の自立と環境負荷の最小化という2つの課題をどう両立させるかが問われる。
さらに、アンチモンは日本を含む同盟国の産業にも広く使われており、米軍による囲い込みが長期的に国際市場をどう変えるのかも見通しにくい。今回の試みは、弾薬生産の「のど元」を自ら握ろうとする第一歩だが、資源ナショナリズムを強めるだけなのか、同盟や民生分野も含めた安定供給の枠組みづくりにつながるのかが、今後の焦点となる。
参考・出典
- US military developing small refineries for critical minerals
- Antimony
- US Antimony Corp wins $245 million Pentagon contract to build defense stockpile
- US clears path for Idaho antimony supply – Metal Tech News
- Interior Department releases final 2025 List of Critical Minerals
- Pentagon launches critical minerals mission – Metal Tech News
- 米:Perpetua Resources社、アンチモンの国内生産を目指し国防生産法の下で最大24.8mUS$の資金拠出を受ける
