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台北で開かれた式典の壇上で、米国在台協会の代表が「コミットメントは揺るがない」と語る少し前、ワシントンでは別の文書が静かに公開されていた。米国防総省が台湾向けに高性能防空ミサイルシステムNASAMSを約7億ドルで供与する契約を結んだと明らかにしたのだ。今回の決定は、わずか数日前に航空機部品の売却を承認したばかりの米国が、台湾防衛への関わりを一段と強めていることを示している。
NASAMS導入で変わる台湾の空の守り
米国防総省は2025年11月17日付の発表で、防衛大手RTXとNASAMS火器ユニット調達に関する固定価格契約を結んだと公表した。資金は2026会計年度の対外軍事販売予算から拠出され、作業はマサチューセッツ州テュークスベリーで行われ、完了予定は2031年2月28日とされている。台湾は既に総額20億ドル規模の武器売却パッケージの一部としてNASAMS3基の取得を決めており、オーストラリアやインドネシアに続く地域での運用国となる見通しだ。
NASAMSは中距離の地対空ミサイルシステムで、複数の発射機やレーダーを広範囲に分散配置できるのが特徴だ。ウクライナでは巡航ミサイルや無人機を迎撃する実戦運用を通じて、高い命中率を示したとされる。台湾には既に国産の天弓シリーズなどの防空網があるが、NASAMSが加わることで、低空を飛ぶ巡航ミサイルやドローンへの対応力が強化される。固定式と機動式、国産と輸入装備を組み合わせる多層防空は、中国軍の初動攻撃を複雑にし、空の「抜け穴」を減らす狙いがあるとみられる。
相次ぐ対台武器供与と米中の綱引き
NASAMS契約の数日前、米政府は台湾空軍のF-16戦闘機やF-CK-1、C-130H輸送機向けの予備部品と修理部品を最大3億3000万ドルで売却する可能性を承認している。対象には標準的な交換部品だけでなく、技術支援も含まれ、長期的な稼働率向上を狙う内容だ。台湾側は、頻繁な中国軍機の接近に対応するためには、最新鋭機の追加だけでなく既存機の整備基盤強化が不可欠だと説明しており、今回の部品パッケージもその一環と位置づけている。
一連の動きに対し、中国は台湾向けミサイル売却を主権侵害だと非難し、断固たる対抗措置を取ると表明した。標的には契約の主請負企業RTXへの制裁も含まれるとされ、米中対立の新たな火種となっている。他方、台湾では国防部長が「中国は武力で物事を解決しようとする考えを捨てるべきだ」と語り、対話による解決を訴えた。台北のイベントでは米国在台協会のレイモンド・グリーン台北事務所長が「米国の台湾に対するコミットメントは今も今後も揺るがない」と述べ、軍事面だけでなく政治的にも支援姿勢を示した。
日本を含む地域安全保障への波紋
台湾海峡の安定は、日本の安全保障とも切り離せない。日本の安全保障関連法には、他国への武力攻撃が日本の存立を脅かすと認定される「存立危機事態」が設けられており、台湾有事が該当し得るかどうかをめぐって政界で議論が続いている。最近も一部政治家の発言をきっかけに、中国が日本に強く反発した経緯がある。台湾周辺での緊張が高まるほど、日本は米国との同盟運用や自国周辺の防空態勢をどう整えるかという難しい計算を迫られている。
台湾がNASAMSのような機動的な防空システムを手に入れれば、中国軍にとって初動で防空網を無力化することは一段と困難になる。日本周辺では、自衛隊と米軍が弾道ミサイル防衛で連携しており、その外側に台湾のレイヤーが重なる構図だ。各国の防空網が網目のようにつながることで、単独では届かなかった空域を相互に補完する形が生まれつつある。個々の契約は数字としては小さく見えても、地域の力学をじわりと変える要素として積み重なっている。
台湾上空を守る新たなミサイルが島内に配備されるまでには時間がかかるが、その準備作業は、公表された契約書と静かな工場のラインから、すでに始まりつつある。
