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国会監査を終えた議員団がロビーに姿を見せ、短い説明を残して散っていった。韓国の国家情報院（NIS）は、2026年3月の米韓合同演習の後に米朝首脳会談が模索される公算が高いとみているという。2025年11月4日の報道では、金正恩氏が「条件が整えば米国と接触する」姿勢を示しているとの見立ても伝えられた。米側は政策の大枠を崩さずに対話の扉を開けており、停滞していた局面がわずかに動いた気配が漂う。
動き出した「後」のシナリオ
NISの評価は、年明けの演習が一つの節目になるという含意を帯びる。説明に立った議員は、北朝鮮が米国との対話に意欲を持ち、条件次第で接触に動く可能性を指摘した。演習は毎年、軍事的な緊張を押し上げるが、終了後には相対的な余白が生まれる。NISは、その「後」に首脳級のやり取りが再び俎上に載る余地があると読む。
こうした見立ての背景には、北朝鮮側のメッセージに漂う微妙な調整がある。硬い表現の陰で、接触の回路を完全には閉じない言い回しが時折浮かぶ。NISは、米政権の実務レベルの動きや周辺国の反応も合わせて、情勢が揺らぐ接点を探っている。演習の期日が近づくほど、静かな探り合いは増えるだろう。
もっとも、評価はあくまで現時点のものだ。過去にも節目の前後で対話の兆候が表れては消えた。今回も、制裁や相互不信という厚い堆積が一挙に解ける前触れではない。にもかかわらず、NISが「後」に可能性を置くのは、危機管理の延長線上に接触の窓を見ているからだと受け止められる。
言葉の綾と条件の重さ
北朝鮮が繰り返す条件は明確だ。米国が非核化の要求を引っ込めるなら対話に応じるという筋立てである。2025年秋の演説でも、米朝の「平和共存」を口にしつつ、核放棄に背を向ける姿勢は崩していない。対話の窓が開くとしても、その敷居は以前より重くなっている。
一方、米ホワイトハウスは10月1日、対北朝鮮政策は不変としつつ、トランプ大統領が「前提条件なし」で金正恩氏との対話に応じる用意があると明言した。過去の合意未達を踏まえ、目標は保ちながら入り口を広げる言い回しだ。非核化という最終図は据え置き、接触のきっかけ作りを優先する含みがにじむ。
ただ、形式や時期は示されていない。大統領のアジア歴訪時にも観測が交錯したが、北朝鮮の公的反応は限られた。いまは互いに言葉の余地を確かめる段であり、窓をこじ開けるのか、あるいは再び閉じるのかは、演習後の空気と周辺情勢の揺らぎに委ねられている。
過去の往還が映す現在地
2018年と2019年に重ねられた米朝首脳会談は、歴史的場面を刻みながら恒久的な枠組みを残せなかった。制裁は維持され、北朝鮮の核・ミサイル開発は進んだ。首脳間の距離は一時的に縮み、やがて離れた。その往還の記憶は、次の接触に期待と警戒の両方を重ねてしまう。
それでも、対話の直前には必ず静かな助走がある。非公開の打診、言い回しの変化、周辺国の間合い。今回、NISが「演習後」に目線を置いたのも、その助走の形を経験的に知るからだろう。条件の壁は高いが、壁の前で立ち止まる仕草が見える時、次の一歩は突然にやってくることがある。
境界の町では、見学通路の柵に秋の影が伸びる。誰もが知る節目が過ぎ、冷えた空気が少し緩んだころ、交わらない線が一瞬たわむことがある。今回もまた、そのわずかな撓みを待つ時間が始まっている。
