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米国が2025年9月に英国と結んだ「技術繁栄協定」の実施を、当面先送りしていることが明らかになった。AIや量子コンピューティング、民生用原子力エネルギーの協力枠組みで、Microsoft、Google、NVIDIA、OpenAIなどが英国に総額約400億ドルの投資を掲げたが、政治交渉の遅れが“実装段階”に影を落としている。
投資の号砲は鳴ったが、計画は「確約」ではない
協定は、研究開発や計算資源(データセンターなど)を含む協力を後押しする狙いだった。CNBCは2025年9月の発表として、Nvidiaが英国でBlackwell GPUの大規模展開を計画し、Googleも英国のAI開発に巨額投資を打ち出したと伝えた。一方で、ジェトロはこの枠組みを「覚書」と整理しており、企業が描くスケジュールと、政府間の“履行の段取り”が別物になり得る点が今回、前面に出た。
止まったのは技術ではなく、取引条件の詰め
英紙The Guardianは2025年12月、米側が実施を止めた背景に、英国のデジタルサービス税(DST)や食品安全規制など、技術協力とは別領域の摩擦があると報じた。つまり、協定は「AIの共同研究」だけで完結せず、相手国市場への参入や規制負担まで含めた“交渉カード”として扱われている。DSTを巡っては米通商代表部(USTR)が以前から国際枠組みでの移行を論点にしており、税とルールが投資の実行条件に直結する構図が透ける。
英国が問われるのは、実利を取りにいく順番
ホワイトハウスは2025年9月に「U.S.-UK Tech Prosperity Deal」を掲げ、同盟国との先端技術連携を象徴する案件として位置付けた。ただ、実施が先送りされた以上、英国側は「技術で何を得たいか」を、税制・規制の調整とどう交換するかの現実問題に戻される。投資の看板が下りなかったとしても、現場が必要とするのは“いつ、何が動くか”の確度であり、協力の熱量を保てるかは交渉の時間軸次第だ。
参考・出典
- U.S. – UK Tech Prosperity Deal
- US puts £31bn tech ‘prosperity deal’ with Britain on ice
- Microsoft, Nvidia, other tech giants plan over $40 billion of new AI investments in UK
- The United States, Austria, France, Italy, Spain, and the United Kingdom Announce Extension of Agreement on the Transition from Existing Digital Services Taxes to New Multilateral Solution Agreed by the G20/OECD Inclusive Framework
