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長野県の空き家を狙った侵入窃盗で逮捕されたベトナム人グループについて、長野県警は捜査の結果、2025年1月ごろから5月までに関東や東北を含む広域で168件に関与し、被害総額が600万円を超えるとみている。上田、佐久、茅野、諏訪など県内の複数市に加え、福島や埼玉などでも被害が確認されたという。空き家は「無人」だけでなく「見守る目が途切れる」点が弱点になる。今回の事件は、増え続ける空き家を誰がどう守るのかという課題を、現場の犯罪として突きつけた。
狙われるのは金目の物より「気配の薄さ」
長野県警の説明では、容疑者は県内外で空き家に侵入する手口を重ねた。被害総額が600万円超とされても、地域側の受け止めは金額だけでは測れない。窓が破られたり室内が荒らされたりすれば、住民にとっては間接影響として安心感が揺らぐ。もし修繕や片付けが先送りになれば、人通りの少ない場所ほど「次も起きるのでは」という感覚が残りやすい。
空き家が狙われやすい理由は、泥棒の側から見れば「声を上げる人がいない」ことに尽きる。埼玉県警察も、空き家を狙った侵入窃盗への注意を呼びかけ、郵便物の滞留や庭の荒れが不在のサインになり得るとしている。防犯は鍵やカメラだけでは完結しない。手入れや見回りといった小さな管理が、犯行の下見を鈍らせる役割を持つ。
資産である一方、管理が途切れやすい「住まいの空白」
空き家は、ひとことで言うと「住む人が常時いないことで、管理が途切れやすい不動産」だ。遠方に住む相続人や、別荘として使う所有者にとっては、現地に行く回数を確保するだけでも負担になる。ここで生じるのは直接影響としての手間と時間で、鍵の確認、通風、郵便物の整理といった作業が積み重なる。管理の空白ができた瞬間に、犯罪側の選択肢が増えてしまう。
さらに、守りを固めようとすれば費用が伴う。もし補助錠やセンサーライト、管理サービスの利用を増やすなら、家計には間接影響としてコストがのしかかる。一方で自治体は、空き家の適切な管理に関する情報提供や相談体制を整えている。長野市は、点検や管理の指針、管理事業者の紹介制度などを案内している。犯罪対策と利活用は別の話に見えて、管理が続く仕組みを作れるかという一点でつながっている。
広域事件の捜査は「点」をつないで輪郭を作る
長野県警察は2025年7月、茅野市と諏訪市の空き家侵入事件などで、ベトナム国籍の男らを逮捕したと発表している。その後も県外での容疑を視野に、捜査第三課などが関与する逮捕事案を公表した。個別事件だけを見ると「一つの空き家が荒らされた」話に見えるが、168件という数は、県境をまたいで同種事件を拾い上げた結果として現れる輪郭だ。
FNNプライムオンラインは、茅野市の空き家に侵入して金貨などを盗んだ疑いで再逮捕された事案があると伝えた。こうした押収品や侵入の痕跡、移動手段の線が集まると、広域の連続性が浮かび上がる。捜査の観点では、県をまたぐほど情報共有の速度が鍵になる。住民側から見れば、気付いた違和感を早い段階で通報することが、点をつなぐ第一歩になり得る。
問われるのは「守り切る」か「空白を減らす」か
空き家の防犯は、警察の取り締まりだけでは追い付かない局面がある。テレビ朝日系の報道では、別の地域でも空き家を狙った侵入窃盗でベトナム国籍の男らが逮捕された事案が出ている。つまり、狙いが立てやすい家が残り続ける限り、場所を変えた同種事件は繰り返される。犯罪側の工夫を待つのではなく、所有者側が「気配」を作り直す必要がある。
選択肢は大きく2つに分かれる。定期的な管理や設備で「守り切る」か、貸す、売る、利活用して「空白を減らす」かだ。長野県警察は、補助錠や防犯フィルム、センサーライトの活用、空き家の長期放置を避けることなどを示している。結局のところ、168件という数が示すのは、空き家の弱点が個人の家を超えて地域の課題になっている現実で、当面の答えは管理の継続性をどう確保するかに集約される。
