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ハマスに「人質解放と武装放棄、さもなくば悲惨な結末」と迫る最後通告が、ワシントンで現実味を帯びた。トランプ米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相と並び、ガザ戦争の終結をうたう20項目の計画を公表。受け入れの猶予は「3～4日」とし、拒否なら軍事作戦を全面支持すると言い切った。仲介国の反応は慎重で、停戦への扉は細いが開いている。
ホワイトハウスで示した「20項目」の中身
2025年9月30日（JST）、ホワイトハウスでトランプ氏はネタニヤフ氏と共同で、戦闘停止と人質の段階的返還を核に据えた20項目の枠組みを示した。両者が受け入れれば戦闘は直ちに止み、人質は72時間以内に返されるという設計だ。条件は明快だが、合意の重さはガザとイスラエルの現場にそのまま落ちていく。
計画は、ガザの統治を暫定的に国際枠組みに委ね、治安は国際部隊と改編されたパレスチナ治安機構が担う像を描く。復興資金と人道支援の大幅拡充をうたい、国境管理を強化し物資の流れを安定させるという。だが最終的なパレスチナ国家承認の道筋は明記されず、政治的な出口はなお霧の中にある。
停戦の履行は、ハマスの武装解除と統治からの離脱が前提だと位置づけられた。イスラエル軍の撤収は国際部隊の展開と段階的に連動し、治安が安定するまで周辺の安全地帯を保持する構想である。復興と治安、統治移行を同時に動かす多層の工程が、和平を支える骨格となる。
トランプ氏の最後通告とイスラエルの姿勢
トランプ氏は同日、記者団に対し「ハマスには3～4日で決断してもらう」と述べ、引き延ばしは許容しない構えを示した。交渉の余地は「多くはない」とも語り、拒否ならば「非常に悲しい結末になる」と警告した。提案の球は、明確にガザ側へ投げ込まれた格好である。
ネタニヤフ氏は計画への支持を表明し、ハマスが応じない場合は「やり遂げる」覚悟をにじませた。イスラエル政府は長く、人質返還と武装解除、ハマス統治の終焉を戦争終結の条件としてきた。米国からの全面的な政治支援は、軍事作戦の継続に実質的な後ろ盾を与える。
一方で、ハマスの公式回答は出ていない。仲介国が文書を届け、受け入れ可否の協議が進むが、現地の通信や移動の制約は意思決定を鈍らせる要因になる。条件交渉の余白が乏しいまま、猶予の時計だけが音を立てて進んでいる。
仲介の現場とガザのいま
仲介の要を担うカタールは、提案は大枠として評価しつつも詳細の「更なる協議が必要だ」と表明した。ドーハではカタールやエジプト、トルコの担当者がハマス側と詰めの協議に入る段取りだ。イスラエルの完全撤収や政治的地平に関する文言を巡り、アラブ諸国の期待との間に微妙な溝が残る。
ガザでは、人道危機が交渉の背景を重くしている。戦闘での死者は6万6千人超、負傷は17万人近くに達したとの集計がある。砲撃はなお断続的に続き、病院は飽和状態だ。停戦への一歩が遅れるほど、民間人の犠牲と社会基盤の損壊は積み重なっていく。
北部からの避難は長期化し、8月中旬以降だけでも45万人規模に広がったとの報告がある。ガザ市の戦闘は激しさを増し、人々は南へと流れ続ける。テントの列と壊れた道路、満杯の病棟が日常となり、交渉の文言ひとつが持つ現実的な重みが、かつてなく切実に感じられている。
