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短波無線の雑音が強まり、極方向の空に淡いベールが揺れた。11日夜、太陽の活発域がふたたび火を噴き、X5.1クラスの太陽フレア(太陽面の大規模爆発)が発生した。衛星観測は大規模なコロナ質量放出(CME)が伴ったことを捉え、地球では強い磁気嵐が進行中だ。影響は12日から13日にかけても続く見通しで、通信・測位・電力など暮らしの足場に注意が必要になる。
相次ぐ噴出が重なり合う
観測によれば、X5.1フレアのピークは11日19:04ごろ。太陽観測衛星は、噴出直後に太陽表面を走る衝撃波と、その後のCMEを映し出した。放出雲は1500 km/s級の高速で、地球への到来は13日朝から昼ごろと見込まれている。到来の幅が大きいのは、前日までに飛び出した複数のCMEとの相互作用が続いているためだ。
この数日の太陽面では、9日・10日の噴出に続き、11日により速いCMEが追加で発生した。後から出た高速の雲が先行する雲に追いつき、衝突して一体化すると、磁場の乱れが強まりやすい。専門家が「共食い型CME(Cannibal CME)」と呼ぶふるまいで、到来時の影響幅が読みにくくなるのが難点だ。
米海洋大気庁の宇宙天気予報センターは、11日から13日にかけて段階的に警戒を引き上げ、12日には上から2番目の「G4(Severe)」相当の見通しを公表した。実際の地上影響は、到来雲の磁場が南向きかどうかで大きく変わる。予報は随時更新され、13日についても強い変動の可能性が注視されている。
地上でも増えた粒子、GLEの手がかり
11日のフレアでは、電離圏の乱れに伴う電波障害に加え、地上の中性子モニターで宇宙線量の一時的増加が報告された。これは「GLE(Ground Level Event、地上線量の増加現象)」と呼ばれるまれな兆しで、高エネルギーの太陽粒子が大気を貫いて地表へ届いたことを示す。規模や回数の正式整理は今後の解析に委ねられるが、国際観測網のデータは顕著な反応を示した。
通常、太陽からの粒子は地球磁場と大気で遮られ、地上まで届かない。だが、フレアやCMEに伴う衝撃で粒子が極端に加速されると、地表近くでも二次粒子の増加として捉えられる。GLEは航空機高度の被ばく評価や、人工衛星の設計・運用に直結するため、過去事例との比較とスペクトル解析が続けられている。
今回の増加は、2000年代半ばに観測された顕著なGLEとの近似が指摘されている。とはいえ、観測地点の磁気緯度や局所時、背景の宇宙線トレンドが結果を左右する。複数拠点の同時解析で、強度と持続時間、到来方向の異方性を突き合わせる作業が進む見込みだ。
通信・電力・測位への影響
太陽フレアはX線・極紫外線で上層大気を急速に電離させ、短波(HF)通信にブラックアウトを起こす。今回もフレア直後、日照側地域で強い通信障害指標が記録された。CMEに起因する磁気嵐が重なると、高緯度の送電網では誘導電流が増え、保護装置の作動や電圧変動が生じやすくなる。測位衛星(GNSS)も、電離圏の乱れで精度が不安定になることがある。
宇宙機運用では、衛星の姿勢制御や電源系を守るため、一時的なモード変更や観測計画の調整が取られることがある。地上では、送電・通信の運用者が監視体制を強め、異常時の遮断・迂回ルートを準備するのが定石だ。予報機関は、磁場の向きや到来速度の更新を逐次公表し、ユーザー側の対応判断を支援している。
なお、一般の生活者に直接の生体リスクはない。ただし高緯度の航空路や極域観測では、電波・放射線環境が平常と異なる。運航会社と研究機関が共有するリアルタイム指標を踏まえ、航路や高度の微修正でリスクを抑える運用が行われる。
極大期の山が示すもの
太陽活動は約11年周期で強弱を繰り返す。第25周期は活発期の山に差しかかり、今季最強級のフレアが繰り返し観測されてきた。今回のX5.1は、そのピーク局面に重なった象徴的な一撃だ。立て続けのCMEが重なったことで、オーロラ帯は拡大し、普段は見えにくい地域でも光のカーテンが報告された。
オーロラは、太陽風の荷電粒子が地球磁場に沿って極域へ誘導され、高層大気の酸素や窒素と衝突して励起し、光として放たれる現象だ。CMEで粒子の流束が増えると、磁気嵐が強まり、光の幕は低緯度へ広がる。観測好機は、到来の数時間後から次の夜にかけて。晴天と暗い空が重なれば、都市部でも淡い彩りが見つかることがある。
一方で、強い現象ほど振れ幅も大きい。今回のように複数のCMEが重なる場面では、予報は「幅」を伴うのが常だ。宇宙天気は刻々と変わる。その変化に合わせて、人の側が静かに備えを重ねる時間が流れている。