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ウクライナのゼレンスキー大統領とシルシキー総司令官が、日本時間で2025年9月27日、ロシア軍の今季攻勢は狙いを達せず、戦場で大きな損害を被っていると述べた。要衝ポクロフスク近郊ドブロピリアでの反撃が象徴となり、膠着の裏で戦術の主導権が揺れ始めている。
ドネツク前線で何が止まったか
東部ドネツク州の丘陵帯に秋風が吹くころ、ドブロピリア周辺では装甲の唸りよりも無人機の羽音が耳に残るという。ゼレンスキー氏は夜間の演説で、ロシア軍がここで前線突破を狙ったが、ウクライナ軍の反撃で無力化したと語った。補給の結節点ポクロフスクに近い地形は、両軍の作戦を吸い寄せる。
シルシキー氏は記者団に、ロシアの春夏の作戦は実質的に頓挫したと明言した。北部スムイやハルキウでの緩衝地帯づくり、ポクロフスクの攻略、ドネツク州全域の掌握という狙いは阻まれたという。現時点で確認されている範囲では、作戦目標の達成よりも消耗の拡大が際立つ。
前線各所でロシア軍は小幅な前進を重ねたが、2022年のような速さは戻らない。偵察と攻撃を兼ねる無人機の重層運用が進軍の足を鈍らせ、小隊単位の浸透がかえって損害を拡大させる。総司令官はこの連続小突撃を「千の切り傷」と形容し、攻め手の失血をにじませた。
損害の実像と数字
双方とも死傷者の詳細にはほとんど触れない。だが西側の情報機関の一部推計では、戦場での死傷者は累計で100万人を超えたとされる。前線の強度は維持される一方で、人員と装備の摩耗が戦況を鈍く重くしていることは否めない。
シルシキー氏は前線の延長を1,250キロと示し、戦闘に投入されたロシア側の人員は約71万人と見積もる。広大な戦域に散在する小さな突破口の奪い合いが続き、局地的な成功が戦略の反転に直結しにくい現実が浮かぶ。数字は作戦の広がりと負荷の大きさを物語る。
夏の盛り、ドブロピリアの周辺でロシア軍が一時的に食い込んだ局面もあったという。総司令官は、カゼーニィ・トレツ川沿いでロシア部隊を罠にかけ、補給路と退路を断って出血を強いたと説明した。戦果は控えめに語られるが、地形の活用が防勢の鍵になっている。
ポクロフスクが持つ重み
ポクロフスクは道路と鉄路が交わる物流の要であり、周辺の炭鉱や工業地帯と前線をつなぐ動脈でもある。ここを押さえることは、南北の補給線を縛ることに直結する。だからこそ、ドブロピリアの丘陵や河川の線は、単なる村落の境界を超えて重みを増している。
ロシア側は周辺集落の制圧を相次ぎ主張し、前進の連続性を演出してきた。だがウクライナ側は確認に慎重で、実際の支配線は複雑に屈曲する。砲兵の間合いと無人機の空間が刻々と変わり、地図の線引きが翌日には別物になる。小さな前進の代償は、弾薬と兵の損失に跳ね返る。
一方でウクライナは後方深くへの打撃と防勢の堅持を両立させ、相手のオペレーションを乱す狙いだ。ロシアは対話を急ぐべきだと迫るが、キーウは一方的な受け入れは降伏に等しいと退ける。次の焦点は、補給線の切断と防空の底上げがどこまで並走できるかにある。
