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ウクライナの大統領、ゼレンスキー氏は6日、トランプ米政権のスティーブ・ウィトコフ特使とジャレッド・クシュナー氏と長時間の電話協議を行ったと公表した。和平案を巡る米側との調整で「実質的」な議論だったと強調し、今後の協議の段階や形式でも合意したという。前線への攻撃が続くなか、戦争終結に向けた新たな政治ルートが動き始めている。
前線と市民が見つめる「実質的な」協議
ゼレンスキー氏はSNSで、ウィトコフ特使とクシュナー氏との電話協議について「非常に実質的で建設的だった」と説明し、米国と誠実に協力し続ける姿勢を示した。AFP通信やロイター通信によれば、この協議にはウクライナ側の交渉責任者ルステム・ウメロフ国家安全保障会議書記や、軍参謀総長アンドリー・フナトフ氏も加わり、戦争終結に向けた条件や安全保障の枠組みについて意見を交わしたとされる。電話だけでは詰め切れない論点も多く、今後は対面での報告や検討を重ねることが想定されている。
一方で、ロシア軍はミサイルや無人機による攻撃を続け、エネルギー関連施設への被害も報じられている。米紙ニューヨーク・ポストなどは、多数の飛翔体が各地のインフラを狙った夜間攻撃と、同時進行する和平協議の様子を伝え、停電や避難生活を強いられる市民にとって交渉の行方が日常の安全と直結している現実を浮かび上がらせた。ウクライナ国内では、長引く戦争を終わらせたいとの思いと、領土の扱いなどで過度な譲歩を迫られるのではないかという懸念が交錯しているとの指摘もある。
ウィトコフ特使とクシュナー氏、米独自チャネルの狙い
ウィトコフ氏は不動産開発で知られる民間出身の実業家で、トランプ大統領の特使としてウクライナ和平を巡る調整役を担う。スイスの経済メディア「Moneycab」によると、同氏とクシュナー氏は今週、モスクワでプーチン大統領と5時間を超える会談を行い、ロシアが要求する占領地の扱いなどを協議したが、領土問題を巡る隔たりは依然として大きいという。今回の電話協議は、そうした米ロ間の対話や、事前に行われた複数の協議を踏まえた「次の段階」と位置付けられている。
同時に、米フロリダ州マイアミではウメロフ氏らウクライナ代表団とトランプ政権側の交渉が数日にわたって続いていると、AFPや各種メディアが報じている。欧州の論評サイト「アゴラ」などでは、米ロや米ウが中心となる協議が欧州やウクライナ国民の声を置き去りにしかねないとの警戒感が示される一方、いずれの経路であっても戦闘停止につながる現実的な案を模索すべきだとの議論も見られる。トランプ政権ルートの和平交渉は、流血を減らす可能性と引き換えに、ウクライナの主権や長期的な安全保障をどこまで守り切れるのかというリスクを抱えたまま進んでおり、その負担を誰がどのように背負うのかが今後の焦点になっていく。
