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電気・ガスの請求書に身構える家庭が増えるなか、政府が冬場の負担を和らげる案を詰めている。2026年1〜3月の使用分を対象に、3か月で計6000円程度を補助する方向だ。経済対策全体は2025年度補正予算と減税を合わせて17兆円超の規模を見込み、2025年11月21日にも閣議決定の見通しとされる。家計の底冷えを、財政で一時的に受け止める狙いである。
家計を直撃する冬、電気・ガスをどう守るか
対象は一般的な家庭の電気・ガス代で、1、2月は寒さが厳しいため手厚く、3月は緩める設計が議論されている。7〜9月に月1000円程度の支援があったが、冬場は倍増させ、3か月で計6000円程度の負担軽減をめざす。最終案は与野党の調整を踏まえて固める。
具体の算定や事務手続きは追って示される見込みだが、使用量や契約種別に応じた支援とする方向が軸になる。短期間の集中的な補助で、光熱費の急峻な上振れを受け止め、年明けの可処分所得の落ち込みを緩和する狙いがある。家計の呼吸を整え、賃金の伸びを待つ時間をつくる設計だ。
政府は物価高が落ち着くまでの橋渡しを重視し、家計の安心を先に届ける方針を掲げる。首相は「責任ある積極財政」を打ち出し、補正予算で戦略的な財政出動を行う考えを明確にしている。政策の骨格はここに通じる。
17兆円超の対策と掲げる財政観
対策の総額は、一般・特別会計の支出と大型減税を合わせて17兆円超とする方向が示されている。一般会計の支出は14兆円程度と見込まれ、前年の規模を上回る。臨時国会で補正予算案の成立をめざし、2025年11月21日の閣議決定が取り沙汰される。規模の大きさは、負担軽減と成長投資を同時に進める意志の強さを映す。
同時に、ガソリン税や軽油引取税の暫定税率は廃止を国会でめざし、実現までの間は補助で価格を下支えする方針だ。税制改正に伴う所得税減税も織り込み、家計の実質負担を広く押し下げる設計が進む。価格の痛みを和らげつつ、賃上げの芽を育てる狙いである。
戦略投資では、造船の再生に向けた工程表を定め、官民で1兆円規模の投資を担う構想がある。先端半導体の量産化やデータセンター立地を支える電力など周辺インフラも重点化し、エネルギー安全保障と産業競争力の底上げを同時に図る。物価対策と成長投資を分けずに束ねるのが今回の特徴だ。
医療・介護では、物価高の打撃を受ける民間病院の経営改善に向け、新たな融資制度の創設を検討する。報酬改定を待たずに現場の資金繰りを支え、必要なサービスを途切れさせない意図である。慢性的な人手不足とコスト高が続くなか、現場に届くスピード感が問われている。
自治体の裁量が生むきめ細かさとばらつき
家計のきめ細かな支援として、政府は自治体に食料購入支援などの推奨メニューを提示し、重点支援地方交付金を拡充する。世帯当たり約1万円の負担軽減効果を見込み、「おこめ券」など現物性のある支援の活用を想定する。地域の実情に沿うための裁量を広げ、迅速に届ける構えだ。
一方で、実施の可否や中身は自治体の裁量に委ねられるため、地域で支援の厚みが異なる懸念がある。研究機関からは公平性の観点で課題を指摘する声も出ており、同じ負担でも受けられる支援が違う可能性が示される。制度設計の丁寧さが、納得感を左右する。
国は全国一律の現金給付を見送り、負担軽減と地域裁量を重ねる道を選んだ。短期の光熱費支援、税の見直し、自治体の柔軟策が重なり合い、家計と産業の底を支える。声の小さな層にも届く運び方ができれば、冷え込みの底は浅くなる。
