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秋田で相次ぐクマ被害に、自衛隊の支援要請が現実味を帯びてきた。鈴木健太知事は26日にSNSで緊急要望の方針を示し、28日に防衛省で小泉進次郎防衛相と面会。大臣は「できるところから迅速に」と述べ、後方支援の具体化に踏み出す姿勢を明確にした。揺れる日常に、国の力が届き始めている。
新内閣と秋田の危機感、自衛隊支援は「できることから」
冷え込みが深まり始めた朝、玄関の扉を開ける前に金具を鳴らす音が町に混じる。秋田では、店先の自動ドアを止めて手動に切り替える対応も見られ、通学路の列は保護者の目に守られて進む。クマが暮らしの近くにいる現実が、日々の所作を変えつつあると映る。
2025年10月28日 09:00ごろの会見で、小泉防衛相は鈴木知事と既に電話で連絡を取り、同日中に緊急要望を直接受けると明かした。自衛隊法100条に基づく捕獲個体の輸送支援など過去の協力実績に触れつつ、「要望の内容に基づき、できるところから速やかに進める」と強調した。自治体の求めに即し、まずは動くという意思表示である。
一方で、災害派遣の判断に関わる「緊急性・公共性・非代替性」についても大臣は言及した。全国の被害者が100名を超える現状を踏まえ、自治体だけでは対応困難な場面で自衛隊が何を担えるかを精査する考えだ。駆除そのものではなく周辺の後方支援に軸足を置く姿勢がにじみ、決定の地平線が近づいたとみられる。
「緊急銃猟」が動き始めた法改正と現場の限界
今秋、都市部の危険に即応する法整備も動いた。7月8日に改正法の施行期日と施行令改正が閣議決定され、緊急銃猟の対象や実施者の要件、通行の禁止・制限、損失補償の手続きなどが定められた。市街地での出没に、市町村長が技能者に委託して危険を排する道筋が整いつつある。制度の骨格が見え、現場は新たな選択肢を得たといえる。
ただ、現場は人手が薄い。熟練の捕獲者は限られ、出没が同時多発する中では、捕獲後の輸送や解体まで負担がのしかかる。小泉氏も、猟友会と自治体の疲弊が深刻だと指摘した。安全確保や運搬、処理に関わる一連の手間を誰が担うのか。制度と人員の隙間が浮かび、支援体制の上乗せが急務となっている。
だからこそ、自衛隊の役割は現場の背中を押す後方支援に置かれるとみられる。連絡調整のための体制づくり、捕獲個体や資機材の輸送、現場周辺の警戒や動線確保、通学路の見守りといった周辺業務の強化だ。法体系の整理をにらみながら、段階的に実務を積み上げる局面に入った。日常を取り戻すための「縁の下」を固められるかが焦点である。
