アスクル売上が1カ月で95％減　ランサム攻撃で物流停止の衝撃広がる

※記事を視覚化したイメージであり、実際の事象とは異なります。

2025.12.02

本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]

オフィス通販大手アスクルの売上が、わずか1カ月で“ほぼ消えた”。10月19日にランサムウェアによるサイバー攻撃を受けて受注を止めた結果、11月度（10月21日〜11月20日）の単体売上高は16億9800万円と、前年の約5％にまで落ち込んだ。日々の備品を届ける物流インフラが突然止まった今、物流インフラの停止リスクを誰がどう分散するのかが問われている。

止まった通販が職場と医療現場に残した穴

コピー用紙やトナー、手袋やマスクといった消耗品を、法人向け通販でまとめて調達してきた企業は多い。11月度のアスクル事業の売上は約17億円と、前年の1割にも満たない水準に落ち込み、個人向け「LOHACO」の売上はわずか300万円だった。数字の急減は、全国の職場で「当たり前に届くはずの荷物」が届かなかった日々をそのまま映している。

影響はオフィスにとどまらない。TBS系の番組などでは、医療機関が衛生用品や事務用品の不足を懸念し、他のルートを急ぎ手配した状況が報じられた。大規模病院や大企業は複数の仕入れ先を持つことも多いが、小規模の診療所や中小企業では「日常の通販」に依存する比重が高く、調達先の切り替えだけでも相当な負担になる。

一方で、こうした混乱をきっかけに、社内の購買体制を見直す動きも出ている。平時から別系統の仕入れ先を確保しておくことや、最低限の在庫を積むルールづくりを進める企業もある。アスクルにとっては信頼回復が急務だが、利用者側にとっても「ワンクリックに頼り切らない備え」を考える契機となっている。

アスクルの決算延期と復旧シナリオ

今回の混乱の起点は、10月19日に発生したランサムウェア攻撃だ。アスクルは受注と出荷を停止し、11月度の単体売上高は前年同月比95.1％減の16億9800万円に落ち込んだと公表した。主力である事業所向け通販が事実上ほとんど機能しなかったことを意味し、短期間で数百億円規模の売上機会が失われた計算になる。

アスクルはプレスリリースで、まず事業所向けサービスの再開を優先し、セキュリティ対策を強化したうえで順次ウェブサイトや出荷機能を復旧させる方針を説明している。12月上旬にウェブ注文の再開を目指し、在庫商品の出荷も複数の物流拠点から段階的に広げる計画だ。一方で個人向けの新規受注は12月1日時点でも止まったままで、全サービスの本格復旧には時間がかかる。

業績への影響も読みにくい。2025年11月期中間決算は当初12月15日に公表予定だったが、システム障害による損失額や復旧費用などの算定に時間を要するとして延期された。サイバー攻撃後の対策投資は一時的な負担を押し上げるが、同時に今後の取引先からの信頼を左右する。アスクルは「早さ」と「安全性」の両立という、通販企業共通のジレンマに直面している。

相次ぐサイバー攻撃が突きつける「止まるリスク」

今回の事態は、アスクルだけの問題ではない。ビール大手のAsahi Group Holdingsも9月末のサイバー攻撃で受注や出荷が滞り、決算発表の遅れや一部商品の欠品に直面したと海外報道が伝えている。企業活動の多くがITと物流システムに依存する中で、ひとたび基幹システムが止まれば、業種を問わずサプライチェーン全体が揺らぐことが浮き彫りになった。

通販・物流業界では、アスクルの障害によって「月340億円超の売上が市場から消えた」とする専門紙の試算も紹介され、影響の大きさが議論されている。こうしたショックをきっかけに、倉庫管理システム（WMS）などを提供するITベンダー側も、バックアップ体制の整備や復旧訓練の重要性を改めて訴えている。サイバー攻撃への備えは、もはや情報システム部門だけのテーマではなくなりつつある。

誰がどこまでこの「止まるリスク」のコストを負担するのかも、今後の論点だ。通販事業者は多重化したシステムや代替物流ルートの整備に投資し、利用企業は調達先の分散や在庫基準の見直しで応じる必要がある。政府や業界団体による中小企業向けのセキュリティ支援も欠かせないだろう。95％減という衝撃的な数字の裏側には、日々の現場を静かに支えてきた「見えないインフラ」があり、その脆さをどう補うかが問われている。

止まった通販が職場と医療現場に残した穴

アスクルの決算延期と復旧シナリオ

相次ぐサイバー攻撃が突きつける「止まるリスク」

参考・出典