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大西洋をまたぐ通信を「量子計算機でも破られにくい暗号」で守れるかが、机上の議論から実運用の検証段階に入った。英Colt Technology Servicesは現地時間1月15日(日本時間1月16日)、量子コンピューティングがもたらす暗号リスクを想定した世界初の大西洋横断試験を完了したと発表した。企業のクラウド利用やAI処理が増えるほど国際回線の重要度は上がり、通信中データの耐量子化は避けて通れない論点になりつつある。
実網で100GbEを耐量子方式で通す 海底と陸上をまたいだ検証
試験では、Coltが陸上区間を含む大西洋横断の海底ネットワーク上で、100ギガビット・イーサネット(100GbE)のデータ伝送に成功したとしている。鍵となったのは「量子安全(quantum-safe)」をうたう暗号化で、NokiaとAdtranのソリューションを組み合わせた点が特徴だ。Coltの説明では、NokiaのPre-Shared Key(PSK、事前共有鍵)技術と、AdtranのML-KEMを用いたPost-Quantum Cryptography(PQC、ポスト量子暗号)を活用したという。つまり、特定ベンダーに閉じない形で耐量子の仕組みを実回線に載せ、性能面でも100GbEを維持できることを示した格好である。
量子計算機が現行暗号を将来破る可能性が指摘される背景には、いま暗号化して保管した通信データを後で復号する「Harvest now, decrypt later」の脅威がある。PQCはアルゴリズムを置き換えて耐量子性を確保する考え方で、ML-KEMはその代表例の一つに位置付けられる。一方、QKD(量子鍵配送)は量子の性質を使って鍵共有の盗聴検知を狙う別アプローチで、用途や距離、運用要件が異なる。Coltが複数手法(PSKやPQC、将来的にはQKDも)を並走させる構えを示すのは、万能解がまだ固まっていない現実を踏まえた現実解だと言える。
Grace Hopper海底ケーブルも活用 2026年後半の商用化が焦点
今回の試験は、欧州と米国を結ぶ「最も混雑する海底回線ルート」を念頭に置いた取り組みだとColtは位置付け、実験の重要な構成要素としてGrace Hopper海底ケーブルを挙げている。同ケーブルは大西洋横断の基幹インフラとしてAI処理、動画配信、企業クラウドなどの需要を支えるという整理で、耐量子化は単なる研究テーマではなく事業継続の要件に近づいている。加えてColtは、2025年にも光ネットワーク上で量子リスクに備える暗号方式の試験を進めてきた経緯があり、段階的に「陸上→海底」へ対象を広げている。連続した実証の積み上げは、技術成熟というより運用設計(鍵管理、障害時の切替、ベンダー混在)を詰めるフェーズに入ったことを示唆する。
今後の焦点は、2026年後半に提供予定とする耐量子サービスをどの範囲まで「商品」として定義できるかだ。ColtはPSK、PQC、QKD、さらにハイブリッド型の提供を見込むとしており、金融・医療・政府など高機密領域の需要を想定している。Nokiaも衛星などを活用した超長距離の量子安全技術の実証に言及しており、陸海空(宇宙)をまたぐ鍵共有・暗号運用の競争が強まる可能性がある。耐量子化は暗号方式の差し替えにとどまらず、国際回線の信頼性と規制対応を左右する基盤競争へ移りつつある。
