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立憲民主党のプロジェクトチームがまとめた「給付付き税額控除」の制度設計案が判明したのは2025年9月26日朝。まず国民一律に4万円を配り、後から所得税で受け取る額を調整するという発想だ。3党協議が月末から動き出す見通しで、物価高の痛みをどう和らげるか、実務と理念の間で揺れる。
一律4万円、あとで調整—立憲PT案の骨格
案の柱はシンプルだ。食料品にかかる消費税負担の平均を手がかりに、全国民にまず4万円を給付する。支給は自治体申請に頼らず、公金受取口座を使った「プッシュ型」を前提とする。受け取った後の最終着地は、年末調整や確定申告での所得税計算で調整し、所得が高いほど実質の受取額が小さくなる累進の形を描く。
給付は現金を先に動かすが、仕組み全体は「税を通じた再分配」を核に据える。あらかじめ登録された口座に振り込むことでスピードを確保しつつ、過不足は税で均す。コロナ禍の給付で露呈した申請手続の遅さや自治体の事務負担を避けるため、国の口座登録簿とマイナンバー基盤を活用する設計である。
世帯の具体例も示されている。片働きの夫婦に子ども2人という想定で、年収が670万円未満なら1人あたり4万円を満額受け取れる。扶養の数を所与とし、税の計算に合わせて手取りが決まるイメージだ。
一方で、年収が670万円を超えると段階的に目減りし、上限は1232万円で実質ゼロに収れんする。機械的な線引きに見えても、背後には扶養控除や税率構造との整合を取る計算が横たわる。家計に届く現金の即効性と、税を介した公平の両立をどう図るかが眼目だ。
本来の「給付付き税額控除」との違い
そもそもの給付付き税額控除は、納税者の税額から一定額を差し引き、差し引ききれない分は現金で給付するのが基本形だ。税の仕組みの中に給付を織り込むことで、低所得層でも取り残しなく支援が届く利点がある。消費税の逆進性を補い、働くインセンティブも損ないにくい制度設計として国際的にも広く議論されてきた。
今回の立憲案は、その理想形に至るまでの「過渡期の策」と位置づけられる。まずは一律に現金を動かし、税務で精算する。所得や資産を精密に把握しながら減税と給付を一体運用するには、データの突合や行政の接続に時間がかかる。だからこそ、現金の速さと税の公平を段階的に接ぎ木する道を選んだ。
4万円という額は、食料品にかかる消費税の平均的な負担を基準に弾いたとされる。物価上昇で家計の「食」が細るなか、日々の買い物で感じる痛みをピンポイントで和らげる狙いがにじむ。給付の出し方は一律だが、税でならせば再配分の濃淡はつけられるという発想である。
もっとも、制度の名を冠しながら「事実上の給付ではないか」との違和感は党内にもある。名称と中身の距離感をどう埋めるか。最終的にめざす本来形へのロードマップと、いつどの段で何を実装するかの工程表が問われる局面だ。
広がる協議の行方—30日に3党で制度設計へ
政治の日程は動く。自民、公明、立憲の3党は政調会長レベルの協議を2025年9月30日に始める段取りだ。参院選後の与野党の力学が入れ替わる中で、物価高対策の「与野党協働」をどう作るかが試される。協議体は制度の枠組みから実施時期、所得捕捉とプライバシーのバランスまで、幅広い論点を抱える。
焦点は実務にも及ぶ。年末調整と確定申告でどう負担を分けるか、給与所得者と自営業者の扱いをどう揃えるか、家族構成の反映をどこまで緻密にするか。調整の透明性は肝で、納税者が自分の最終受取額を見通せる説明可能性が求められる。制度はわかれば使われるが、わからなければ不信に傾く。
支給の足腰を担うのが公金受取口座だ。国があらかじめ登録を受け付け、給付時に申請や通帳の写し提出を省く仕組みである。登録や変更はマイナポータル経由で行える。デジタル給付の直線距離を伸ばすには、登録の裾野をさらに広げ、金融機関側との照合を安定運用に乗せることが前提となる。
財源はなお議論が続く。金融所得課税の強化や、税制全体の累進性の見直しを組み合わせる案がたびたび浮上している。消費を冷やさず、成長の芽を摘まない設計に落とせるか。短期の家計下支えと中期の税制改革を同じ土俵で回すには、段差の少ない移行策が欠かせない。
制度名に込めた理念と、足元の即効性を両立できるかが最大の見せ場だ。与野党が折り合いを付ける過程で、線引きや工程の揺れは避けがたい。だが、目的は明快である。家計の痛みを和らげながら、公平な再分配へ道筋をつけること。その一点を見失わず、合意の形を詰め切れるかが問われている。
