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中国の空港で、日本行きの便を示す文字が出発案内板から次々と消えているという。台湾有事をめぐり高市早苗首相が国会で「存立危機事態になり得る」と答弁した後、中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけ、わずか2日間で約50万席分の航空券がキャンセルされたとみられている。日本経済を支えてきた中国人観光客の流れが、大きく揺らぎ始めた。
50万席が消えた2日間、データが示す急ブレーキ
独立系航空アナリストの李漢明氏は、2023年以降、中国の主要航空会社やオンライン旅行代理店から得たフライトデータを追い続けている。李氏によると、2025年11月15日時点で約150万人だった中国から日本への予約は、17日には約100万人に減少した。2日間で約3分の1が消えた計算で、単純に差を取るとおよそ50万席分の旅程が取り消されたことになる。
背景には、高市首相の発言に反発した中国政府が14日に日本への渡航を控えるよう注意喚起を出したことがある。李氏は「緊張がさらに高まれば、キャンセルは確実に増えるだろう」とAFPの取材に語ったという。現地メディアの報道では、空港には日本行きの列も残る一方で、団体ツアーの多くが姿を消し、出発ロビーの空気が変わりつつある様子が伝えられている。
揺らぐ観光立国、旅行会社と地域経済の不安
中国政府の注意喚起を受け、旅行代理店は急な対応を迫られている。ある会社はパンフレットから日本向けツアーを削除し、問い合わせも受け付けないことを決めた。一方で、外交の緊張は一時的だと見て、既存商品の販売を続ける会社もある。売り止めにすれば損失は確定するが、維持すれば突然の情勢改善に乗り遅れるかもしれないという、難しい判断が続く。
日本側にとって、中国人旅行者の減少は小さくない。日本政府の統計では、2025年1〜9月に日本を訪れた外国人観光客のうち中国からが最も多く、約750万人に上った。地方空港や温泉地、都市部のドラッグストアや家電量販店まで、多くの店が彼らの消費を当て込んでいる。今回の騒動の起点となった「存立危機事態」とは、日本が直接攻撃されていなくても、密接な他国への武力攻撃で国の存立が脅かされると政府が認定した状態を指す安全保障上の概念だ。
外交上の言葉の一つ一つが、離陸を待つ旅客機と観光地の灯りにまで影を落としている。
