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国会での答弁を終えた高市早苗首相の言葉が波紋を広げる中、その余韻が冷めきらないうちに、中国のテレビ局や新聞の画面に「琉球」が次々と現れた。沖縄県の歴史や文化を取り上げる短い動画、琉球諸島の主権を論じる長い社説。台湾有事をめぐる発言への反発と歩調を合わせるように、沖縄の日本への帰属そのものを問い直す論調が、一気に前面に押し出されている。
台湾有事発言への反発が生む「琉球カード」
発端となったのは、高市首相が国会で、中国による台湾への武力行使は日本の存立危機事態にあたり得ると説明したことだ。これは、武力行使を含む安全保障関連法制の発動条件に触れる重い発言で、中国政府は「内政への干渉」と強く反発した。その直後から、中国共産党機関紙系の環球時報などが、琉球諸島の主権には歴史的・法的な議論があるとする社説を掲載し、日本の「琉球処分」によって沖縄県が設置されたと批判を強めた。外交ルートで言い合いが続く最中に、過去の歴史を持ち出して揺さぶりをかける構図が浮かぶ。
同じタイミングで、中国中央テレビはSNS上で、琉球王国時代から中国の習俗や飲食、芸術、茶文化が沖縄に伝わり、その影響が今も残るとする動画を発信した。北京日報系のメディアも「琉球は昔から日本の国土ではなかった」と主張し、日本は他国の内政に口を出す前に「琉球問題」に答えるべきだと迫った。さらに中国のニュースサイトは、沖縄の帰属を日本の歴史的な弱点と呼び、台湾をめぐる日本の姿勢次第で「琉球問題」を交渉のテーブルに載せると警告した。台湾情勢と結びつけて沖縄を論じるやり方は、単なる意趣返しにとどまらず、日本国内の不安や亀裂を刺激しようとする意図もにじむ。
歴史をどう語るか 日本と中国の距離
中国側の議論の軸には、琉球王国が明・清と朝貢を行った「宗藩関係」が置かれている。宗藩関係とは、宗主国に朝貢し保護を受ける代わりに一定の従属を認める仕組みで、中国メディアはこれを根拠に「琉球は中国の勢力圏だった」と強調する。一方、日本は1879年の琉球処分で王国を廃し沖縄県を設置し、その後も一貫して自国の一部として扱ってきた。戦後はサンフランシスコ平和条約で米軍施政権下に置かれたが、1972年に本土復帰を果たし、国際的にも日本の施政が定着している。中国政府は公式には沖縄の日本帰属に異議を唱えておらず、問題提起の主な舞台は学界やメディアだという点も、冷静に押さえる必要がある。
もっとも、こうした論調が今回に限った現象でないことも見えてくる。2013年には人民日報が、沖縄の主権は未解決だとする研究者の論文を載せ、日本政府は強く抗議した。2023年には、習近平国家主席が中国福建省と琉球王国の「深い交流」に言及し、その後、中国メディアが琉球が中国の影響下にあった歴史を強調する特集を組んだと報じられている。尖閣諸島の国有化や台湾情勢の緊張など、日中関係が揺れる局面で、沖縄がたびたび言論空間に引き出される構図だ。日本政府や沖縄県は「沖縄が日本の一部であることに疑いはない」との立場を繰り返しているが、周辺国が歴史をどう語るかが、地域社会の安心感に静かに影を落としている。
中国メディアの紙面や画面に載る「琉球」の文字は、遠い過去の物語としてだけでなく、現在の力学を映す鏡にも見える。