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中国外務省の報道官が12月5日の記者会見で、東アジアの広い海域で報じられている自国艦船の大規模展開について問われ、具体的な規模や目的の確認を避けつつ「中国海軍と海警局は国内法と国際法に沿って行動しており、過度に取り沙汰すべきではない」との立場を示した。だが、周辺国にとっては海運と漁業を支える生活の海でもあり、「何でもない」とされる動きが、どのような不安と負担を生んでいるのかが問われている。
艦船が埋める東アジアの海と、周辺国の静かな緊張
ロイター通信を基に毎日新聞が伝えたところでは、中国軍と海警局の艦船は11月中旬以降、黄海南部から東シナ海、南シナ海、さらに太平洋へとまたがる広い範囲に展開し、今週一時は100隻を超える規模に達したとされる。4日朝の時点でもおよそ90隻が確認されたとの報道もあり、昨年末に台湾周辺で行われた大規模活動と同等か、それ以上の規模とみる見方が出ている。
一部の艦船は戦闘機と連携し、外国艦艇への模擬攻撃や、紛争時に増援部隊を遠ざけることを想定した訓練を行っているとも報じられている。形式上は訓練であっても、民間船舶から見れば、通常の航路近くで軍事行動が行われている状況だ。訓練としての意味と、周辺国が感じる圧力とのあいだには、しばしば大きなギャップが生まれる。
日本政府は、こうした動きについて「平素から重大な関心を持って情報収集・分析に努めている」との認識を示していると報じられている。漁船や商船の運航計画に携わる人たちの間では、海上保安庁の警戒情報や各国軍の演習予定を常に確認しながら航路を検討せざるを得ないという声もある。大規模な艦隊展開が「日常」のように繰り返されるとき、その負担は各国の現場に静かにのしかかる。
「国際法に従っている」と主張する中国の論理
その一方で、中国外務省の林剣副報道局長は5日の会見で、自国の海軍と海警局は中国の国内法と国際法を厳格に守って活動していると強調し、近隣海域での艦船展開を大げさに取り上げるべきではないとの趣旨を述べたと毎日新聞は報じている。大規模な動きが指摘される中でも、「法に沿った通常の活動だ」と位置づけることで、国際的な批判を和らげようとする姿勢がうかがえる。
中国外務省は今年5月、日本最南端の沖ノ鳥島をめぐる問題でも、国連海洋法条約に照らせば同島は排他的経済水域を伴う「島」ではなく「岩」だと主張し、日本が周辺海域をEEZとして扱うのは国際法違反だとテレビ朝日などの報道で伝えられた。自国の活動を「公海での自由な航行」だと位置づけ、日本側の抗議を法的に根拠のないものとみなす論理構成だ。
日本の外務省は一方で、2024年夏に鹿児島県口永良部島近くの日本領海を中国海軍の測量艦が通過した事案などについて、中国艦艇の動向を踏まえ強い懸念を表明し、外交ルートを通じて抗議したと公表している。両国とも「国際法に基づく正当な行動」と主張しながら、現場では互いの艦船がにらみ合う構図が続く。国際法の解釈が安全保障上の主導権争いと結びつき、海上の緊張を長期化させている側面は否めない。
「何でもない」とされるリスクをどう減らすか
今回の艦船展開では、中国側から大規模演習としての正式な発表がないまま、広い海域に多くの艦艇が広がったとされる。情報が断片的なまま規模だけが膨らむと、周辺国は最悪の事態を前提に行動せざるを得ず、誤認や偶発的な衝突のリスクも高まる。事前通報やホットラインの活用、行動規範づくりなど、軍同士の危機管理の仕組みを実際に機能させることが、まず求められる。
沿岸で暮らす人にとって、海は生計と移動を支える場であると同時に、大国同士の力比べが最前線で行われる空間にもなっている。軍事力による抑止を強めるほど安心が高まると見るか、それとも日常の海が「常に緊張した場所」になってしまうと感じるかは、人によって受け止めが分かれる。各国政府は防衛力の強化だけでなく、地域の不安を和らげる外交的な説明責任も問われている。
大規模な艦船展開を中国側が「過度に騒ぐ必要はない」と位置づける一方で、周辺国は情報収集や警戒態勢の維持に追われている。東アジアの海で暮らし、働く人々が負うリスクと負担をどう減らすのか──その問いに向き合い、透明性と対話の仕組みを積み重ねられるかどうかが、静かな海を取り戻せるかどうかの分かれ目になりつつある。
