本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
中国がレアアース輸出をめぐる新たな一歩を踏み出した。関係者によれば、商務省は12月初旬、希土類の「一般輸出ライセンス」第1弾を一部企業に付与し、自動車向けなど滞っていた出荷の再開につなげる。トランプ・習首脳会談で交わされた合意の実行だが、企業の不安がすべて解けたわけではない。
現場を直撃した混乱と、細く開いた出口
今年4月に導入されたレアアース輸出の厳格な許可制は、まず工場の現場を揺さぶった。中国からの磁石や合金に頼る欧州の自動車メーカーでは、部材が届かずライン停止や納期遅延が相次いだ。欧州連合商工会議所が130社を対象に行った調査では、およそ3分の1の企業が調達先の変更や生産移管を検討していると回答している。
今回、中国が動かし始めた一般ライセンスは、取引先ごとに1年単位で有効な包括許可だ。これまで輸出のたびに申請が必要だった仕組みに比べ、一定期間は見通しを持って出荷できる。関係筋によると、磁石大手のJL Mag Rare EarthやNingbo Yunsheng、Beijing Zhong Ke San Huan High-Techが、この新制度で一部ないし大半の顧客向け許可を得たという。
3社はいずれも自動車向けを中心に欧州や米州のメーカーへ製品を供給しており、該当する顧客には在庫不安がやや和らぐ効果が出そうだ。一方で、一般ライセンスを得ていない取引先や中小の需要家には、従来どおり個別審査の負担が残る。欧州企業からは依然として「許可待ちで数カ月動けない」との声も報じられている。今回の一歩は、混乱の出口を少しだけ広げたにすぎないとの見方も根強い。
首脳会談の合意と、中国が握り続ける交渉カード
このタイミングで一般ライセンスが動き出した背景には、10月末に韓国・釜山で開かれたトランプ米大統領と習近平国家主席の会談がある。両国は追加関税の一部取り下げと引き換えに、レアアースを含む重要鉱物で一時的に緊張を和らげることで合意した。中国側が約束した施策のひとつが、今回のような包括的な輸出許可の導入だとされる。
ただし、中国がレアアースの輸出管理を手放したわけではない。4月に始まった7種の希土類や磁石材料へのライセンス義務づけは維持されており、企業は依然として中国商務省の判断を仰がなければならない。10月に発表された、対象をさらに広げる新たな規制は1年間の猶予が設けられたものの、正式に撤回されたわけではなく、「必要ならいつでも締め直せる」状態が続いている。
背景には、レアアース分野における中国の圧倒的な地位がある。鉱石採掘では世界シェアの約7割、精製や磁石製造では市場の大部分を握るとされ、輸出管理は強力なてこになる。米シンクタンクや専門誌は、北京が自国への輸出規制を通じて交渉力を高めると同時に、米欧の輸出管理強化への対抗カードとしても使っていると分析している。今回の一般ライセンスも、そうした力学の中で調整された「部分的な緩和」にとどまる。
欧州の模索、日本を含む輸入国に残る宿題
欧州企業にとって、今回の措置は歓迎しつつも限定的な救済だ。前述の調査では、輸出ライセンスの遅れや取得不能が事業に影響すると答えた企業も多く、一部は世界売上の2割に相当する損失を見込むと試算している。一般ライセンスが与えられた自動車向けの大口顧客はひとまず生産計画を立て直しつつあるが、それ以外の産業では、中国依存の高さを前提にしたまま長期投資を決めることに慎重さが増している。
供給源の多様化を進めようとする動きは米国でも同じだ。国内での精製プラント建設やリサイクル技術への投資が進む一方で、環境影響評価など複雑な手続きが計画を遅らせていると、米紙ワシントン・ポストなどは指摘する。レアアースは電気自動車や風力発電に加え、レーダーやミサイルなど軍事用途にも不可欠であり、需要そのものは今後も増え続ける見通しだ。各国とも、中国以外からの安定供給網を一気に整えるのは容易ではない。
日本を含む他の輸入国にとっても、今回の一般ライセンスは「元に戻った」合図ではなく、備えを進めるための短い猶予期間とみるべきだろう。在庫水準や調達先の分散に加え、省レアアース設計やリサイクルの拡大など、需要側での工夫も求められる。サプライチェーンに一息つかせる今回の緩和の裏で、中国が輸出管理という交渉カードを握り続けている現実は変わらない。その1年をどう使うかが、企業と各国の次の課題になっている。
