トランプ氏の対中追加関税示唆で仮想通貨強制清算拡大

2025.10.11

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土曜の早朝、板が薄くなった暗号資産の画面で成行売りが矢継ぎ早に走った。最高値更新からわずか数日、過去最大規模の強制清算が一気に膨らみ、相場は息をのむ下げ足となった。きっかけは、対中100％の追加関税と重要ソフトウエアの対中輸出規制をトランプ米大統領が示唆したとの報道である。ボラティリティーは跳ね上がり、次に何が連鎖するのかという不安が市場全体を覆っている。

揺れた週末、過去最大の清算が走る

2025年10月11日朝、暗号資産市場では24時間で約190億ドル相当の建玉が消滅したとの推計が出た。デリバティブ市場の清算はわずか1時間に70億ドル超に達した局面もあり、約160万人のトレーダーがロスカットに巻き込まれたとされる。取引所によっては清算のリアルタイム報告に遅延があり、実態はさらに大きい可能性があるという。清算履歴の滝のような表示が続く中、需給は瞬時に売りへ傾き、価格の底を探る展開が広がった。

価格面でも揺れは大きかった。ビットコインは11万3000ドルを下回る場面があり、週初の高値圏から一転して急速な巻き戻しを迫られた。イーサリアムや主要アルトも二桁の下落が目立ち、レバレッジの高いポジションが次々と解体されるにつれ、現物市場にも波紋が及んだ格好である。市場参加者の間では「一度に出た清算の重さ」を指摘する声が増え、短期的な反発余地を探りつつも、連鎖の尾を警戒する空気が濃いと映る。

一連の数字は、暗号資産データを追う各社の集計によるものだ。現時点で確認されている範囲では、記録的な清算規模が市場のセンチメントを一気に冷やし、価格の自律反発を試す前にマージン回復を優先せざるを得ない投資家が増えたとみられる。強制清算が価格下落を加速させ、さらに清算を呼ぶという負のループが、週末特有の薄商いで増幅した構図が浮かぶ。

100％関税の示唆報道と、公的資料が語るズレ

急落の引き金とされたのは、トランプ米大統領が中国に対し「現在の関税に上乗せする100％の追加関税」を課す意向をSNSに投稿し、あわせて「重要ソフトウエアの対中輸出規制」導入にも言及したと伝えられたことである。報道ベースでは関税の適用開始が11月1日とされ、市場は最悪シナリオを織り込みにいった。だが、公的手続きや詳細の官報告示が示されたわけではなく、政策の正確な射程や対象範囲はなお流動的といえる。

実際、ホワイトハウスが8月11日に公表した資料では、中国向けの「高関税」は交渉を進めるために11月10日まで停止を継続し、その間は10％の「リシプロカル（相互）関税」を維持するとしていた。これは当時点の公式スタンスであり、今回の100％上乗せに関する大統領令や規制文書は現時点で確認できていない。一方で、米通商当局は過去に特定分野で100％や50％など高い関税率を段階的に発動しており、対象を絞った高関税の前例は存在する。市場が「全面100％」を先取りした可能性と、対象や発動手順の解釈違いが重なり、混乱を助長したとみる向きがある。

重要ソフトウエアの輸出規制についても、当局の正式な告示や適用品目の明細は確認途上である。国際取引を巡る規制は、通達や連邦官報に基づく詳細設計が実務を左右するため、投資家は一次情報の更新を待つ必要がある。現時点で確認されている範囲では、「強い示唆」と「正式発動」の間に時間差があり、相場はその空白をボラティリティーで埋めた格好だと映る。

レバレッジの増幅と次の焦点

今回の急落では、無期限先物の資金調達コストや証拠金水準が連鎖の鍵となった。相場が一定の閾値を割ると自動清算が走り、清算売りが板を薄くすることで次の清算を誘発する。特に大口のレバレッジポジションが多い時間帯には、その増幅効果が強く働く傾向がある。カウンターパーティーのエクスポージャーがどこまで波及するか、清算の尾がどの市場セグメントに残るかが、目先の最大の関心である。

一方で、過剰なレバレッジの整理が進んだ後には、ファンディングの正常化や清算規模の鈍化が反発の前触れとなる場面も過去には多かった。短期的には建玉の縮小とリスク回避の流れが続くとみられるが、ETFを含む現物サイドのフローや、政策発表の一次情報が整うタイミングが転機となる可能性は残る。市場が次に問うのは、100％関税や輸出規制の「実装」がどこまで具体化するのか、そしてマクロ要因と暗号資産の連動がどの程度まで強まるのかである。

揺れた週末、過去最大の清算が走る

100％関税の示唆報道と、公的資料が語るズレ

レバレッジの増幅と次の焦点

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