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政府は、サイバー攻撃の兆候を早期に把握して無力化する「能動的サイバー防御」の本格運用に向け、その監督役となる第三者機関「サイバー通信情報監理委員会」を2026年4月1日に発足させる方針を固めた。通信情報の扱いを政府から独立して点検する組織で、運用開始を目前に控えるなか、関係者が11日までに設置時期の具体化を明らかにした。
通信を監視する側を監視する仕組み
能動的サイバー防御は、重大な被害が出る前にネット上の不審な通信を分析し、攻撃元のサーバーなどを無力化することを狙う仕組みだ。2025年春に成立し公布された「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」などが法的な土台となり、政府は2027年中の全面導入を掲げている。その中核となるのが、取得した通信情報の扱いを外部から監督するサイバー通信情報監理委だ。
一方で、政府が常時通信情報を取得し分析することには、国民のプライバシーや通信の秘密が侵されるのではないかという懸念も根強い。そこで新設される監理委は、国家行政組織法上の「3条委員会」として、内閣から一定の独立性を持つ形で置かれる。政府機関がどのような通信情報を集め、どの範囲で保存し、いつ廃棄するのかを審査し、問題があれば是正を勧告する権限を持つ点が特徴だ。
これまで内閣官房内の準備室で、委員の構成や事務局体制など具体的な設計作業が進められてきた。2026年度予算案では監理委の運営費が「事項要求」として計上され、サイバー防御の司令塔と位置付けられる国家サイバー統括室など関連組織の整備費と合わせて体制づくりを急ぐ。2026年4月の発足により、法制度と組織の両面で能動的サイバー防御に向けた枠組みがそろう見通しだ。
権利侵害をどう防ぐか、委員会に問われる重責
ただし、どれほど独立性をうたっても、通信の秘密や表現の自由が実際に守られるかどうかは運用次第だ。朝日新聞などは社説で、政府によるネット監視が広がれば、市民が政治や社会問題について発信することを控える「萎縮効果」が生じかねないと指摘し、取得対象や保存期間を厳しく絞り込む必要があるとの見方を示している。監理委がそうした懸念をどこまで代弁できるかが問われる。
成立したサイバー関連法は、国外と日本を行き交う通信や、日本を経由する外国間の通信など、対象を一定の範囲に限定した上で、通信情報の取り扱いを監理委が検査する枠組みを定めた。委員会は政府からの報告や記録を基に、取得や利用が法律と基本方針に沿って行われたかを確認し、必要に応じて是正を求めることになる。こうしたチェック機能が形式にとどまれば、制度への信頼は揺らぐ。
能動的サイバー防御の全面運用が始まるころには、監理委の判断や勧告の積み重ねが、実質的なルールとして定着していくだろう。サイバー攻撃から重要インフラを守りつつ、市民のプライバシーをどこまで守れるのか。新たに設けられる委員会が、政府の安全保障政策と市民の権利のあいだで、どのような線引きを示すのかが今後の焦点となる。
