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米司法省が「Scam Center Strike Force(詐欺センター対策部隊)」の設置を発表した。東南アジア発の暗号資産投資詐欺が米国内で急増し、年間約100億ドルの損失が生じている実態に対応するためだ。偽サイトやアプリを核に米企業のインフラを悪用して資金を集め、国外で資金洗浄する手口を断ち切り、捜査・押収・起訴を一気通貫で進める狙いがある。
始動の狙いと体制
司法省は2025年11月13日、ワシントンで新部隊の始動を告げた。主導するのはコロンビア特別区の連邦検事局で、司法省刑事局、FBI、シークレットサービスが中核となる。発表では、既に暗号資産約4億ドルの押収を進め、約8000万ドルの没収手続きに入ったと説明した。米国内の偽装基盤を断ち、被害金の回収と被害者への返還を柱に据える。
部隊は省庁横断のタスクフォース(複数機関が横断連携する臨時チーム)として、国務省や財務省の制裁当局、商務省とも連携する。焦点はカンボジア、ラオス、ミャンマーに拠点を構える中国系のトランスナショナル犯罪組織(国境を越えて活動する犯罪組織)の首魁を追い詰めることだ。加えて、米国発の通信・決済・クラウドなどの基盤が悪用される回路を企業と協力して遮断する。
被害の広がりも深刻で、シークレットサービスは2025年度だけで約3000人から通報を受けたという。部隊は域内当局との共同作戦も進め、ミャンマーの詐欺拠点で犯行サイトの押収や通信機器の差し押さえに動いた。断片的な摘発にとどめず、資金流と運営中枢を同時に断つ設計である。
仕組みと“詐欺センター”の実像
典型的な手口は、SNSやメッセージで接点を作り、時間をかけて信用させる「ピッグ・ブッチャリング」と呼ばれる型だ。被害者は正規の暗号資産を購入させられた後、偽の投資サイトやアプリに資金を移すよう誘導される。サイトの一部は米企業のサーバー上に置かれ、移された資金は瞬時に国外へ移される。マネーロンダリング(資金洗浄)により追跡を困難にする構図だ。
背後には“詐欺センター”と呼ばれる複合拠点がある。そこでは人身取引で集められた労働者が武装勢力に監視され、詐欺のシナリオづくりや顧客対応を強いられる。司法省は、詐欺収益が地域の経済規模のほぼ半分に達するケースもあると指摘した。被害額の膨張と労働搾取が結びつき、治安・人権・経済の問題がひと塊になって拡大している。
新部隊は現地拠点の通信や衛星端末の差し押さえ、犯行サイトの停止に踏み込む一方、米国内ではインターネット事業者やプラットフォーム企業と協力し、アカウントや回線といった“入口”を閉じる。捜査とインフラ防御、資金還流の3本を並行させる運びだ。捜査線はミャンマーや周辺から米国の被害者の端末まで、双方向に延びている。
広がる封じ込めと地域の動き
同日、米財務省はミャンマーの武装組織や関係企業を制裁指定した。制裁とは、米国内資産の凍結と米国人との取引禁止を通じ、資金調達と決済の経路を遮断する措置である。詐欺センターの運営に電力や通信を供給する主体も対象となり、現場の収益構造を外側から細らせる効果を狙う。刑事摘発と金融制裁を重ねる二重の封じ込めが進む。
域内でも動きは加速している。2025年11月13日には、違法ギャンブル事業と詐欺ネットワークへの関与が指摘されてきた中国籍の実業家が、タイ当局から中国に引き渡された。詐欺センターの温床となった複合開発と資金網をめぐり、各国の司法・警察の連携が一段進んだ形だ。米中双方で自国民被害が広がった現実が、取り締まりの歩調を合わせつつある。
新部隊は企業との協働を前提に、基盤の遮断と資金回収を同時に進める。被害額の線で見れば金融犯罪だが、現場には搾取される労働と暴力がある。矛先が金と人の両方に向くことで、ようやく循環が細り始める。