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トルコのレジェプ・タイイプ・エルドアン大統領は30日、訪問中のフリードリヒ・メルツ独首相とのアンカラでの共同記者会見で、ドイツはイスラエルの「大量虐殺」やガザ攻撃について無知だと非難した。一方でメルツ氏はイスラエルの自衛権を強調し、対トルコ関係の深化に意欲を示した。
発言の焦点：ガザと「大量虐殺」
エルドアン氏は会見で、ハマスは爆弾や核兵器を持たないのに対し、イスラエルはそれらを保有していると述べ、ガザでの爆撃や飢餓を伴う抑圧が続いていると批判した。「ドイツはこれが見えないのか」と問いかけ、ドイツの姿勢を強く牽制した。発言はガザでの被害の深刻さを訴え、国際社会に向けた問題提起である。
同氏はまた、トルコやドイツを含む各国には人道的責務があるとし、暴力と苦難の終結に向けた努力を求めた。対イスラエル政策や用語の選択をめぐる両国の認識の隔たりが、記者会見の場で鮮明になった。
メルツ氏の応答と対イスラエル姿勢
メルツ氏は、ドイツはイスラエルと連帯しており、自衛権の行使を認める立場をあらためて表明した。その上で、「人質の解放と武装放棄が早期に行われていれば、不要な犠牲は避けられた」とし、武装勢力側の責務にも言及した。支持と是々非々の両面を並立させる姿勢がうかがえる。
一方で、同氏はイスラエル政府のすべての判断を無条件に追認するわけではないと述べ、欧州の価値に照らした人権・法の支配の重要性を強調した。大量虐殺という断罪的な表現には踏み込まず、連帯と批判の線引きを明確にした点が特徴である。
対立と接点：防衛協力と欧州連携
会見では、ガザをめぐる見解の違いが露呈する一方で、実務協力の余地も示された。メルツ氏はトルコを欧州連合（EU）の「緊密なパートナー」と位置づけ、輸送や経済分野の連携強化に加え、移民政策や送還手続きの改善などで協力を進める考えを示した。
防衛分野では、エルドアン氏が防衛産業での共同プロジェクトを呼びかけたほか、ドイツがトルコ向けユーロファイター輸出への従来の異議を取り下げたとの報道もあり、装備協力の地ならしが進む兆しがある。政治的な隔たりを抱えつつも、安全保障や産業面で接点を広げたい思惑が交錯している。
また、一部報道によれば、欧州の新たな防衛構想「SAFE」（規模1,500億ユーロ）での協力可能性も取り沙汰されている。ギリシャはトルコ参加に難色を示すが、欧州の戦略的自律をめぐる議論の中で、ドイツとトルコの関係再設計が進むとの見方が広がっている。
