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欧州議会の最大会派、欧州人民党（EPP）を率いるマンフレッド・ウェーバー氏は2025年12月12日、EUが2035年以降の新車を事実上「排出ゼロ」にそろえる現行ルールを、欧州委員会が見直す方向だと語った。12月16日に提案が示される見通しとされる。変更が進めば、車選びと産業投資の前提が揺れ、負担の配分も変わる。
「禁止」より「達成率」へ、何が残り何が変わるのか
現行の枠組みは、乗用車と小型商用車のCO2排出基準を強め、2035年から新車のEU全体目標を0gCO2/kmとする設計だ。ウェーバー氏は、これを「技術の締め出し」にしない形へ改め、メーカーの車両群（フリート）目標を100%減ではなく90%減にする案が軸になると示唆した。制度の看板が変われば、プラグインハイブリッドや合成燃料などの余地が広がる。
ただ、ルールの緩和は「楽になる」だけではない。メーカーは電動化の投資を続けつつ、複数の技術を並走させる設計コストも抱える。購入者側も、充電網の整備ペースや中古車の価値見通しが読みづらくなる。EUは2025〜2027年の目標についても平均達成を認めるなど、移行期の柔軟策を重ねてきたが、延命なのか軟着陸なのかで市場の受け止めは割れる。
ドイツの産業防衛と「技術中立」、政治はどこに着地するか
今回の動きが象徴するのは、気候政策と産業政策の綱引きだ。Reutersなどによれば、ウェーバー氏は消費者の選択と市場の競争で目標を達成すべきだとの立場を強調し、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相も電動化を主軸としながら代替技術の余地を認める姿勢を示した。自動車産業が雇用と輸出を支えるドイツにとって、規制の文言はサプライチェーン全体の投資計画に直結する。
一方で反発も予想される。The Guardianは、規制が実質的に薄まれば環境団体の批判や、一部EV志向メーカーの懸念が強まると報じた。EUのCO2基準は、単に「エンジンかEVか」を決める話ではなく、電池調達、電力インフラ、雇用の再配置まで連鎖する。欧州委員会の提案が実際にどこまで踏み込むのか。政治が描く「技術中立」が、消費者の支払いと産業の競争力の両方を支える形になるかが問われる。
参考・出典
- EU commission to reverse effective 2035 combustion engine ban, EPP's Weber says (Reuters, 2025-12-12)
- EU’s 2035 petrol and diesel car ban will be watered down, says senior MEP
- Cars and vans
- 'Fit for 55': Council adopts regulation on CO2 emissions for new cars and vans (Council of the EU, 2023-03-28)
- Reduction in CO2 emissions of new passenger cars and of new light commercial vehicles | EUR-Lex
