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採決結果を示す電光掲示板が光り、議場にざわめきが走ったのは2025年11月25日、仏ストラスブールの欧州議会本会議場だった。EUは域内の防衛産業を支えるため、総額15億ユーロを投じる「欧州防衛産業プログラム(EDIP)」を可決した。ロシアのウクライナ侵攻後に各国で進んだ再軍備の流れを、一つの長期的な仕組みにまとめる試みでもある。
欧州議会がEDIPを承認、防衛産業を束ねる狙い
EDIPは2025年から2027年までの期間に、EUの防衛産業基盤を強化することを目的とした新たな投資枠組みである。予算は15億ユーロで、このうち3億ユーロがウクライナ支援のための「ウクライナ支援インスツルメント」に充てられる。ロシアによる2022年の侵攻以降、弾薬増産を急いだASAP法や共同調達を支えたEDIRPAといった緊急措置から、より恒常的な備えへ移行する「橋渡し役」と位置づけられている。
資金支援を受けるには、対象となる防衛製品の部品コストの少なくとも65%をEUまたは提携国で調達するという条件が課される。これは非加盟国からの調達に歯止めをかけつつ、一定の柔軟性を残す折衷案だ。欧州議会はこの規則を盛り込んだ法案を、457対148(棄権33)という票差で承認した。ロベルタ・メツォラ議長はSNSで、EDIPは共同調達や共同製造を促し、ウクライナ支援を拡大するために用いられると強調した。
「欧州製」重視と同盟国装備、その間で揺れた交渉
この枠組みが形になるまでには、各国の思惑が激しくぶつかってきた。フランスは域内産業を守るため、可能な限り「欧州製」に絞る厳格なルールを主張してきた。他方でオランダなど一部の加盟国は、米国や英国の装備も選択肢に残すべきだと訴えた。最終的に「非提携国由来の部品コストは35%まで」という線で折り合いがつき、欧州製を優先しつつも同盟国からの調達余地を残す仕組みとなった。
EDIPには、サプライチェーンの高度化を後押しする「FASTインスツルメント」と呼ばれる新基金の創設も盛り込まれ、少なくとも1億5000万ユーロ規模の追加拠出が想定されている。中小企業やウクライナの防衛企業も支援対象に含めることで、単なる軍備拡張ではなく産業政策としての色合いも強い。緊急時に弾薬をかき集めたこれまでとは異なり、将来の危機に備えた生産ラインの拡充や共同開発が静かに動き始めている。議場の喧騒が去ったあと、その影響は各地の工場や設計室でじわりと現れていきそうだ。
