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EUのアントニオ・コスタ欧州理事会議長は9日、ウクライナ向けの今後2年間の金融支援を巡る交渉が大詰めを迎えており、必要な加盟国の賛同を得られるとの見通しを示した。10月に2026～27年の継続支援を政治決定したEUは、18日の首脳会議で資金の出し方を最終判断する見込みで、戦時下のウクライナとEU市民がどのように負担を分け合うかが問われている。
戦時下の予算を支えるEU資金
国際通貨基金(IMF)は、今後2年間にウクライナが経済と軍を維持するには1,350億ユーロ規模の資金が要ると試算しているとAP通信は伝える。前線の兵士への給与だけでなく、公務員の賃金や年金、電力インフラの修復費もEUなどの支援に依存しており、戦費と生活費をどう両立させるかが市民の日常に直結している。
こうした中で欧州理事会は10月、2026～27年もウクライナの資金需要を満たすと政治的に約束し、欧州委員会に具体案の提示を求めた。コスタ氏は9日、アイルランドの首都ダブリンで、加盟国の多くが草案に前向きだと説明し、必要なら合意に至るまで話し合いを続ける考えを示している。18日の首脳会議は、その約束を実際の資金手当てに落とし込めるかどうかを測る場となる。
EUはすでに2024～27年を対象に、最大500億ユーロを供給する「ウクライナ・ファシリティ」を走らせている。予算支援やインフラ投資を束ねたこの枠組みに、26～27年の追加的な安定資金をどう積み増すかが今回の焦点だ。ウクライナのゼレンスキー大統領は、複数年にわたる予見可能な支援がなければ予算編成が難しいと訴えてきており、2年間の「資金の安全網」は学校や病院の運営にも直結する。
凍結ロシア資産かEU共同債か
資金源として最も注目されているのが、ロシア中央銀行の凍結資産から生じる利子だ。ベルギーの決済機関ユーロクリアには約2,100億ユーロ相当の資産が置かれており、その運用益を原資にEUが「賠償ローン」を組成する構想が、欧州委員会の文書やコスタ氏の発言から浮かび上がっている。元本には手を付けず、将来ロシアが賠償に応じた段階で返済させるという仕組みを想定している。
しかしAP通信やEuronewsによれば、ベルギー政府は対抗措置や国際訴訟のリスクを懸念し、慎重姿勢を崩していない。加盟国の多くが賛成しても、法的な責任分担をどう整理するかが最大の難所だ。一方、EU共同債の追加発行で賄う案は、市場からの資金調達が比較的容易な半面、ハンガリーなど全加盟国の同意が必要で、政治的なハードルが高いとみられている。
ロイター通信は、こうした案の是非を巡る協議がEU内の結束を映す試金石になっていると指摘する。コスタ氏は多くの国が妥協点を見いだしつつあると強調し、必要であれば18日の首脳会議以降も交渉を続ける構えだ。合意が遅れれば、短期のつなぎ支援ばかりが積み上がる恐れも専門家からは示されており、ロシアの攻撃が続く中でEUが「長期の安心」と公平な負担の両立をどこまで示せるかが注目される。
参考・出典
- EU's Costa: we are very close to solution on frozen Russian assets
- European leaders agree to fund Ukraine for 2 years but using Russian assets poses a major test
- EU financial support to Ukraine
- Press remarks by President Antonio Costa following the meeting with Taoiseach of Ireland, Micheal Martin
- Belgian resistance holds up €140 billion loan for Ukraine at EU summit
