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各省から担当者が集まり、机の上の資料が次々と差し替えられた。サイバー攻撃の脅威が増す現状を受け、政府は今後5年間の新たな「サイバーセキュリティ戦略」を年内にまとめ、官民一体で対策を進める方針だ。被害の芽を早期に摘む「能動的サイバー防御」を柱に、国が主導して体制を整える。
国が主導、5年戦略で何が変わる
戦略は、重要インフラや行政、研究機関まで視野に入れ、平時からの備えと非常時の対応を一体で強化する設計だ。政府が責任を持って指針を示し、事業者と自治体が同じ地図で動けるようにする。点在する取組の“つなぎ目”を埋め、対処の速度と精度を上げる狙いである。
策定作業は、関係会合での詰めを経て閣議決定へ向かう段取りだ。年内の取りまとめを掲げ、与党側も党内の新設組織で議論を急ぐ。実務面では、発生源の特定や監視・分析の役割分担を明確にし、優先順位と資源配分を見直す。現場で迷わない運用設計が鍵になる。
中核を担うのが内閣官房の国家サイバー統括室(NCO)だ。7月1日に発足し、政府内外の関連情報を集約する拠点となった。首相官邸の戦略本部とも連動し、政策とオペレーションの間を近づける。分散していた知見を束ね、迅速な意思決定へつなげる役回りである。
能動的サイバー防御を柱に
能動的サイバー防御(被害を未然に防ぐため、兆候段階から積極的に対処する考え方)は、5月16日に関連法が成立し、制度面の土台が整った。通信の秘密を尊重しつつ、政府が横断的に情報を活用し、被害の発生・拡大前に動けるようにする枠組みである。
新戦略では、攻撃の兆候をとらえるセンシングと、検知後の初動を滑らかにつなぐ仕組みを厚くする。分析環境の高度化、人材育成、関係機関の常時連携を前提に、国全体の対処能力を底上げする。重要なのは、法に基づく手順と監督の透明性を保ちながら、機動性を確保することだ。
攻撃基盤の無力化を含む対処は、個別の案件ごとに適否を判断し、関係機関が連携して実施する想定だ。対処の前後で得られる知見は、次の防御に回す。一次対応の強化と平時の仕込みを循環させ、強靱性を段階的に高める発想が中核になる。
官民の情報共有と現場力
官民の双方向で情報を流す基盤づくりも加速する。電力や鉄道などの重要インフラ、地方公共団体、研究機関の対策を後押しし、被害時の連絡・報告を一本化して負担を軽くする。10月30日には、ソフトウェア供給者の責任を整理する指針案が示され、活用に向けた意見募集が始まった。
情報共有の“質”を上げるには、技術情報に偏らず、業務や供給網の影響まで見通す視点が要る。NCOがハブとなって横串で可視化し、各省庁や民間の窓口に素早く返す。中小や自治体の現場で使える助言やチェックリストに落とし込めば、裾野の底上げに直結する。
戦略は計画書で終わらせず、訓練、検証、公開のサイクルで磨き続けることが肝心だ。年度ごとの優先課題を明確にし、調達や補助制度とも連動させる。年末の取りまとめが、現場の作法をそろえる新しい基準線となる。静かながら、確かな変化が始まっている。