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政府は16日午前、安全保障上重要な土地の利用をめぐる2024年度分の調査結果を公表した。自衛隊基地などの「重要施設」周辺で、外国人・外国法人が土地や建物を取得した割合は3.1%(11万3827件中3498件)だった。一方で、施設の機能を妨げるといった安全保障上の懸念事例は確認されなかった。数字は安心材料になり得るが、監視の網が広がるほど「何をどこまで見ているのか」も問われる。
3.1%という数字が意味する「距離」と「範囲」
調査は「重要土地等調査・規制法」に基づき、重要施設の周囲おおむね1kmに設定される「注視区域」計583か所を対象に実施された。公表された集計では、区域内で取得が確認された土地・建物は11万3827件で、そのうち外国人・外国法人の取得は3498件だった。割合は3.1%で、懸念事例は見つからなかった。
重要土地等調査・規制法は、ひとことで言うと「基地周辺や国境離島などで、土地が施設の機能を妨げる使われ方をしないかを調べ、必要なら是正できる枠組み」だ。今回の結果は、少なくとも取得という入り口の段階で、目立つ阻害行為が広がっている状況ではないことを示す。生活者への直接影響は限定的だが、暮らす地域が調査対象に入る人にとっては、手続きの見通しに関わる情報でもある。
「懸念なし」と「監視不要」は同義ではない
ただ、懸念事例が確認されなかったことは、リスクがゼロになったという意味ではない。制度が見ているのは、土地の使い方が「機能阻害行為」につながるかどうかであり、所有者の国籍や法人形態だけで結論を出す設計ではない。調査は登記簿や住民基本台帳、商業登記簿などの公簿情報を軸に進め、必要に応じて現地確認も行う仕立てだ。
視点を変えると、今回の数値は「対象区域が広いほど、一般の住宅取引も統計に乗る」ことも示唆する。内閣府が公表している前年度分(令和5年度)の資料でも、規制対象区域で外国人・外国系法人の取得は2.2%で、阻害行為は確認されなかった。朝日新聞は当時、都市部で取引が目立つと伝えた。数字の増減だけではなく、地域の性格や取引の濃淡を踏まえた読み取りが欠かせない。
583か所という網の広がりが生む運用の重さ
注視区域が583か所に及ぶという事実は、制度が狙う「点」よりも「面」の管理に近づいていることを意味する。注視区域の対象には、防衛関係施設だけでなく、海上保安庁の施設や原子力関係施設、特定の空港なども含まれる。地図や航空写真、公開情報まで使う調査は、精度を上げられる一方で、継続的な人手と知見が要る行政運用でもある。
ここで見落とせないのは、監視の強化が社会のコスト構造にも影を落とす点だ。対象がさらに拡大した場合、調査や照合の作業量が増え、行政コストとして間接的に税負担の議論につながる可能性がある。加えて、区域の指定や運用が複雑化すれば、土地取引の当事者が確認すべき事項が増え、時間と手間の面で間接影響が出る余地もある。どこまでを安全保障の必須コストと捉えるかが論点になる。
次に問われるのは「数字」ではなく「線引き」
この法律は、問題の兆しがあれば勧告や命令で是正を促すことを想定している。だが、現実の運用では「どの程度で危険と判断するのか」という線引きが難しい。抑止を重く見れば早めの介入が選ばれやすいが、過度に広げれば正当な利用まで疑いの目を向けることになりかねない。四国新聞社は、制度開始後の調査として外国人取得の件数が報告されたと伝えている。
今回、懸念事例が確認されなかったことは、制度が直ちに生活を縛る方向へ動いていないという意味で重要だ。一方で、今後の分岐は2つある。監視の網を広げて早期発見に寄せるのか、それとも対象を絞り、運用の透明性と説明責任を厚くして納得感を確保するのか。現時点の暫定的な答えは、統計を出して終えるのではなく、地域ごとの実態に合わせた「使い方の基準」を磨けるかにかかっている、ということだ。
