欧州がロシア凍結資産を担保化へ　ウクライナ復興融資で結束強まる

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2025.12.09

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欧州の主要首脳が8日、ロンドンに集まり、ロシアの凍結資産を担保にウクライナ向けの大規模融資を組成する構想で足並みをそろえつつある。ウクライナ復興のために最大900億ユーロ規模の資金枠を年内に合意できるとの見方が広がる一方で、戦後の安全保障をどう保証するかを巡っては、米欧の溝がなお深く残っている。ロシアの資産を「誰がどのように使うのか」が、ウクライナ市民だけでなく欧州の納税者と金融システムの行方をも左右し始めている。

復興資金を誰が負担するのか　凍結資産に託す欧州の計算

ロシアによる侵攻が長期化する中、ウクライナの復興費用は今後10年で5,000億ドル超に達するとの試算もある。財政余力が限られるウクライナだけでなく、インフレや景気減速に直面する欧州各国にとっても、「どこまで自国の納税者に負担を求めるか」は政治的な重荷だ。その出口として浮上しているのが、制裁で凍結したロシア中銀などの資産を梃子にする融資スキームである。

今回議論されている案は、凍結資産そのものを没収するのではなく、資産とそこから生じる利子を担保に、ウクライナ向けの巨額融資を組むという構造だ。すでにG7主導の「ERA（エキストラオーディナリー・レベニュー・アクセラレーション）」では、凍結資産の利子収入を原資に5百億ドル規模の貸付が動き始めている。新たに構想される最大900億ユーロの枠組みは、これを復興投資にも広げ、将来のロシアからの賠償金で返済するという発想に立つ。

8日のロンドン会合では、ウクライナのゼレンスキー大統領と英国、ドイツ、フランスの首脳が、この融資保証の仕組みを巡り「前向きな進展」があったと強調した。欧州委員会の既存スキームでは、すでに何度もウクライナ政府に資金が送られ、年金や公務員給与、インフラ修復などに充てられている。今回の枠組みが実現すれば、戦時下でも中長期の予算を描けるだけの安定した資金繰りが見込める一方、その裏側で欧州がどこまで法的リスクと対ロシアの緊張高まりを引き受けるかという問題が浮かぶ。

法的リスクと安全保障の溝　合意後も残る不安定さ

凍結資産の活用には、なお大きな抵抗もある。ロシア中銀の資産の大半はベルギーの決済機関ユーロクリアに集中し、訴訟リスクや報復措置を懸念するベルギーは慎重姿勢を崩していない。ロシア側は凍結資産の利子を含む活用を「盗難」と非難し、関連国や機関を相手取った法的手段を示唆する。欧州委員会は「資産の所有権はロシアに残る」として国際法上の正当性を訴えるが、欧州の金融センターとしての信認を損なう恐れがあるとの指摘も根強い。

資金面の仕組みが固まりつつある一方、戦後の安全保障枠組みでは米欧の温度差が際立つ。米国が主導する停戦案には、ウクライナに領土譲歩や防衛体制の制約を求める要素が含まれると伝えられ、ゼレンスキー大統領はこれに強い警戒感を示している。欧州側も早期停戦の必要性は認めつつ、ロシアに有利な条件での合意が将来の侵攻リスクを高めかねないと懸念し、NATOとの関係強化や長期的な軍事・財政支援の保証を重視している。

つまり、ロシアの凍結資産を担保にした融資は、当面の復興資金をひねり出す有力な手段となり得るが、それだけでウクライナや欧州の安全を確立できるわけではない。年内合意が現実味を帯びても、法的な防波堤づくりや加盟国間のリスク分担、米国の和平構想とのすり合わせといった課題は残る。破壊された街を再建する資金の流れが、将来どのような安全保障秩序と結びつくのか――その設計次第で、ウクライナ市民にとっての「平和の質」も大きく変わることになる。