ガザの死者7万人超に　2年続く衝突が示す深い人的負担

※記事を視覚化したイメージであり、実際の事象とは異なります。

2025.11.30

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イスラエルとガザの武力衝突が始まってから2年以上が過ぎ、犠牲の規模が新たな段階に入った。ガザ地区の保健当局は11月29日、2023年10月7日以降に死亡した人が7万人を超え、死者数は70,100人に達したと発表した。停戦が続く現在も、がれきの下から新たな遺体が見つかり、負傷後に亡くなる人もいるという。この記事では、この数字がどのように積み上がり、誰がその重さを負っているのかを探る。

ガザの暮らしに積み重なる「数字」の重さ

7万人という数字の裏側には、名前と顔を持つ家族の物語が幾重にも重なる。各紙の取材では、1度の空爆で数十人の親族を同時に失った住民の証言も伝えられている。国連機関は、砲撃や封鎖で住宅や道路が破壊され、遺体の捜索と身元確認そのものが困難になっていると指摘し、統計に現れない行方不明者も少なくないとみている。

現在は米国の仲介による停戦が10月から続いているが、その間も死者は増え続けている。ロイター通信やAP通信によれば、停戦後も散発的な攻撃で子ども2人が死亡したほか、過去の空爆で崩れた建物の下からようやく掘り出された遺体が、まとめて統計に加えられているという。表に出てくる数字は、戦闘の「後追い」で更新されているにすぎない。

医療体制の崩壊も、数字をさらに重くしている。複数の報道では、ガザでは十数万規模の負傷者が十分な治療を受けられず、感染症や慢性疾患の悪化で命を落とす例もあるとされる。家族は満足な葬儀もできないまま次の避難先へ移らざるをえず、死者数の更新はニュースというより、「自分の家族の誰が名簿に載ったのか」を確かめる作業に近い日常になっている。

保健当局の集計と、信頼性をめぐる溝

ガザの保健当局は、戦争初期には病院に運び込まれた遺体を基準に死者を数えていたが、施設の破壊が進むと、家族からの届け出や救助隊の記録、法医学的な確認を組み合わせて集計する方式に切り替えたと説明している。身元が分からない遺体は一時的に保留され、後になって確認が取れた段階で統計に加えられるため、ある日を境に数百人単位で数字が跳ね上がることもある。

一方で、イスラエル政府は、この数字には武装勢力の戦闘員も含まれ、政治的に誇張されているとの見方を示し、ガザ側の統計に疑問を投げかけてきた。ロイター通信によれば、イスラエル側は自らの推計値を公表しておらず、代わりに「民間人を意図的に標的にしてはいない」と繰り返している。しかし、外部の監視団体や衛星画像は、住宅地への集中的な攻撃が続いてきた実態を示している。

ガザの保健行政は、イスラム系武装組織が統治する政権の一部門であり、統計には政治的な色合いがまとわりつく。それでも国連や主要援助団体は、戦前から蓄積されてきた医療データとの整合性などを踏まえ、「おおむね信頼できる」と評価してきた。ただし公表されるのは、民間人と戦闘員を区別しない一括の人数であり、誰がどのように犠牲になったのかをめぐる議論は、依然として数字の陰にかくれたままだ。

長期化する戦争と、私たちに残された問い

今回の戦争は、2023年10月7日にガザからの奇襲攻撃で約1,200人のイスラエル人が殺害され、250人以上が連れ去られたことから始まった。その衝撃はイスラエル社会に深く刻まれ、「二度と同じことを起こさない」という怒りと恐怖が、長期にわたる軍事作戦を正当化する論理の土台になっている。一方で、その対価としてガザで膨れ上がった死者数は、地域全体の将来を縛る新たな傷になりつつある。

2年以上に及ぶ空爆と地上戦で、ガザでは住宅やインフラの大半が破壊された。国連機関は、復興には巨額の資金と数十年単位の時間が必要になると見積もる。欧米や中東諸国は、停戦後の統治体制をめぐって、国際的な治安維持部隊や暫定統治機構の設置などを協議しているが、どの案も現地の信頼を得られるかは不透明だ。

遠く離れた日本から見れば、7万人という犠牲は「どこか別の地域」の悲劇として映りやすい。それでも、日本政府は人道支援や復興支援を通じて、この紛争の行方に関わっていく可能性が高い。続く速報のたびに、離れた場所で暮らす私たちも、この戦争をどのように記憶し、関与するのかを静かに問われている。ガザの空ではなく、自分たちの足元の社会から、その答えを探す必要があるだろう。

ガザの暮らしに積み重なる「数字」の重さ

保健当局の集計と、信頼性をめぐる溝

長期化する戦争と、私たちに残された問い

参考・出典