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サイレンが鳴り響くなか、救急車の扉が次々と開き、担架に乗せられた人びとがガザ中部の病院へ運び込まれていく。22日夜、停戦下にあるはずのガザ地区でイスラエル軍の空爆が相次ぎ、少なくとも20人が死亡、多くが負傷したと地元当局は伝えた。犠牲者は中部のヌセイラート難民キャンプやデイルアルバラフ、西部の集合住宅など住宅地の住民が中心で、子どもの姿も含まれていたという。
住宅地を襲った連続空爆
今回の攻撃は、1回きりでは終わらなかった。ガザ市中心部リマル地区では車両が標的となり、別の空爆はガザ中部デイルアルバラフやヌセイラート難民キャンプの家屋を直撃した。さらに西部の集合住宅も破壊され、多数の住民ががれきの下敷きになったと民間防衛当局は説明する。医療当局は、死亡者数を20人以上、負傷者を80人超とし、一部の現地機関は21人が死亡したと発表している。アルアクサ病院などには救急車が途切れなく到着し、夜通し手術室の明かりが消えなかった。
イスラエル軍は、この一連の空爆について「停戦の条件として設けられた境界線『イエローライン』を越えた武装勢力がイスラエル兵に発砲したことへの対応だ」と主張する。この線は、停戦合意でイスラエル側とガザ側の実効支配地域を区切る目安として示された仮想の境界だ。これに対し、ハマスの管理下にある民間防衛機関の報道官は、イスラエル軍による5回の空爆で21人が死亡したとし、「明白な停戦違反であり、危険なエスカレーションだ」と語ったという。住民からは「境界線の話をされても、爆弾が落ちてくる現実は変わらない」との声も漏れる。
揺らぐ停戦と積み上がる犠牲
現在の停戦は、2023年10月7日にハマスがイスラエル南部を急襲し、約1200人が死亡、251人が拉致された事件ののち、10月10日に発効した。その後のイスラエル軍の大規模な軍事行動で、ガザ側の死者はおよそ6万9700人に達したとされる。停戦により戦闘は大幅に減ったものの、完全には止まっていない。ロイターは、停戦後も断続的な攻撃などで少なくとも316人のパレスチナ人と3人のイスラエル兵が死亡したと伝える。一方、ガザの保健当局は20日までの集計として312人のパレスチナ人が犠牲になったと発表しており、数字は日ごとに積み上がっている。
イスラエル側は、今回のような空爆はすべて「停戦に違反した武装勢力への限定的な対処だ」と説明する一方、ハマス側は「攻撃の口実にすぎず、被害の大半は民間人だ」と反論する。両者の主張はかみ合わず、現場を独立して検証することも難しい。ガザではハマスが実効支配しており、犠牲者数は民間防衛機関や保健省が公表するが、国際機関が全体像を把握するには限界がある。度重なる空爆は、「停戦」という言葉への信頼をすり減らし、援助でかろうじて暮らしを支える人びとに、次の一撃がいつ来るのかという終わりの見えない不安だけを残している。
砕けた窓ガラスの向こうで、人びとは再び張られたビニールシートを押さえながら夜をやり過ごす。その静かな手つきに、明日もまた同じ不安が続くことを前提とした暮らしぶりがにじむ。
