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2025年10月10日、ガザの行方をめぐる一文が各地の携帯画面に走った。イスラム組織ハマスに加え、イスラム聖戦とパレスチナ解放人民戦線（PFLP）が、いかなる「外国の後見」も認めないと共同声明で示したのである。統治は内政の領域だと強調しつつ、再建でアラブ諸国や国際社会の関与から利益を得る用意も示した。停戦や復興の設計図が議論される中、主導権を手放さない意思がにじむ。
「外国の後見」を退ける三者の線引き
粉じんの匂いが残る街角で、統治の主語を誰に置くのかという問いが重く響く。共同声明は、ガザの統治が「純粋にパレスチナの内政」であると指摘し、域外からの政治的管理や監督の構想を明確に退けた。武装組織同士が歩調を合わせ、外部主導の枠組みを拒む姿勢を並べた点に、この文面の狙いが浮かぶ。
現時点で確認されている範囲では、声明は具体的な統治の設計図や権限配分、治安部門の扱いまで踏み込んではいない。ただ、誰が「決める側」に立つのかを先に示すことで、域外の案が先行することへのけん制を効かせたとみられる。外部からの移行政権や信託統治に近い発想に対し、主権と当事者性を確保する線引きである。
一方で、声明の同床異夢も透ける。ハマス、イスラム聖戦、PFLPは立場や支持基盤が異なる。連名という形式が、内政問題化の旗印を優先する「合意の最小公倍数」を選んだことを示す。外部主導の枠組みを退ける一点で一致しつつ、今後の権力や行政の配列はなお流動的だと映る。
内政の原則と再建の現実主義
声明は、統治は内政と線を引く一方、再建ではアラブ諸国や国際社会の参加から利益を得る用意を明記した。がれきの撤去、インフラの再生、医療と教育の立て直しには、資金と資機材、人的支援が不可欠である。主権と支援の両立をどう形にするかが、これからの実務の核心になる。
この二層構造は、統治と復興の受け皿を切り分ける発想に通じる。外からの政治的監督は拒みつつ、財政・技術・人道支援の関与は受け入れる。たとえば資金は国際機関や二国間枠で調達し、実装は地場の行政と専門機関で担うといった分業である。支援の窓を開けながら、意思決定の鍵は内側に残す狙いが見える。
もっとも、支援は中立性と透明性を伴うガバナンスによって信頼を得る。資材搬入の検査、配分の監査、治安の確保など、実務の要所で摩擦は避けがたい。声明が示した「受け入れる関与」とは、政治的監督の代替としての技術協力や資金供与に限るのか、あるいは一時的な現地オフィスや連絡メカニズムまで含むのか。詰めるべき論点は多い。
統治像の手がかりと残る空白
共同声明は、外部の関与を再建に限定し、統治の主導権を内側にとどめる原則文書として読める。他方で、行政機構の再建、治安部門の一元化、税や公共料金の徴収、司法と公共サービスの復旧といった制度面の工程表は示されていない。合意は政治の羅針盤だが、羅針盤だけでは船は進まないという現実がある。
一部報道では、停戦や人質・被収容者の交換、軍の配置転換など、並行する政治・安全保障のパッケージが動く中で今回の声明が出たと伝えている。他方、声明自体はガザの主権的統治を強調する内容に絞られており、包括合意の細目に対する直接の言及は見当たらない。報道の文脈と当事者の文面に、微妙な距離が残る。
街に戻る人の列と、壊れた配電線を見上げる子どもの視線が重なる。だれが統治し、だれが支えるのか。声明は原則を置いたに過ぎないが、復興の道筋を国際支援と結びつける余地を残した点は現実的でもある。外の力をどう借り、内の意思決定をどう守るのか。次の合意文書が、その折り合いを映すことになる。
